2012 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品類の河川流域モデルの構築~光分解速度の時空間的変動を組み込む方法の提案~
Project/Area Number |
12J06333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
花本 征也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光分解 / 自然浄化機能 / 河川 / 確率論的モデル / モンテカルロ法 / 医薬品類 / 日内変動 / 底質への吸着 |
Research Abstract |
本研究は、現地調査と解析的手法に基づき、河川流下過程における医薬品類の光分解効果を評価する手法を検討したものであり、得られた結果は以下のとおりである。(1)水環境中での化学物質の光分解を評価するためのツールとして、太陽光強度の変動を時間単位で組み込んだ確率論的モデル(光分解モデル)を、琵琶湖・淀川水系中流域を対象に構築した。既存の確率論的モデルは、区画間の計算が独立して行われるため、明確な日内変動を示す太陽光強度をモデル計算に組み込むことが出来ておらず、本研究で構築した光分解モデルは、世界で初めての試みであると考えられる。(2)流域から河川に排出される負荷量に対する下流地点への到達負荷量の割合である流達性を把握するため、琵琶湖・淀川水系で日内変動調査を行い、河川での医薬品類の流達性を把握した。減衰が認められない物質が多く存在したが、光分解性や底質への吸着性が高い物質は、明確な減衰が認められた。光分解性が高く、生分解性や底質への吸着性が低いketoprofen、furosemide、diclofenacは、桂川区間では流達性の時間変動が明確に認められ、日中は大きく減衰したが、夜間は減衰がほとんどなかった。これまで、光分解の時間的変動を実証した事例はほとんどなく、高い新規性を有する知見が得られたと考えられる。(3)現地調査とこれまでのラボ実験で得られた知見をもとに、光分解モデルの検証を行った。桂川区間において、ketoprofen、furousemide、diclofenacは、光分解モデルを用いた流達性の予測値と現地河川調査での実測値が一致したことから、開発した光分解モデルの妥当性が検証された。また、既存モデルでは現地観測された夜間の流達性の上昇が捕らえられず、河川での化学物質濃度の上昇を再現できないことが明らかとなり、本研究で開発した光分解モデルの有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、河川流下過程において生じる光分解の時間的変動の実態をとらえるという目的に関してだが、桂川において日内変動調査を繰り返し実施することで、光分解性の高い医薬品類の流達性が太陽光強度の変動に伴って日内で大きく変動することを明らかにしており、研究は順調に進呈していると考えられる。また、光分解の時間的変動を考慮できる確率論的モデルを構築するという目的に関しても、モンテカルロ法に2重ループを適用して日内変動と日間変動とを区別して評価することで構築し、実測値との照合も得られているため、この点に関しても、順調に進呈していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究で構築した光分解モデルの海外への適用性について、より詳細に検討する。また、底質への吸着のメカニズムに関しても、まだ明らかとなっていないため、詳細な検討を行う。さらに、淀川水系における現地調査も継続して実施する。
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Research Products
(4 results)