2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙の加速膨張と重力理論の理論的研究および観測的検証
Project/Area Number |
12J06424
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木村 蘭平 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 重力理論 / ダークエネルギー / 宇宙論 |
Research Abstract |
将来の精密な観測からの制限を通して重力理論を検証するため、本年度では主に重力理論の理論的研究および観測的制限に非常に有用となる観測量の定量的評価を行った。具体的に用いたモデルは重力理論の中でもスカラー場を含む重力の有効理論として考えられている最も一般的なスカラー・テンソル理論およびGalileon理論を研究した。 具体的には、宇宙背景放射におけるISW効果と大規模構造の相互相関の観測量を評価し、大規模構造における重力定数がニュートンの重力定数よりも強くなる場合には非常に強い観測的制限が得られることを具体的なモデルを用いて証明した。また、重力チェレンコフ効果を用いた制限も行った。重力波の音速が光速より小さくなる重力理論では、宇宙線の陽子の一部がチェレンコフ効果と類似した効果によって重力子を放射する。この性質を用いることで最高エネルギー宇宙線の観測から制限を得ることができ、その制限から重力波の伝搬速度に非常に強い制限を与えることができることを明らかにした。これらの結果は将来の重力理論の制限として非常に有効かつ重要である結果で、重力理論を制限する観測量として非常に適していることを明確に示した。 また、現在執筆中の論文ではMassive gravityに新たなスカラー自由度を対称性によって導入したQuasi-dilaton理論における非線形効果(Vainshtein機構)の研究を行った。この結果、漸近的にミンコフスキー時空となる解が、最もシンプルなモデルでは必ずゴースト不安定性を含むことを証明し、また唯一不安定性のない解は必ず宇宙論的な解となることを明確に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は理論的性質の解明および重力理論の制限として有効な観測量の評価の双方を研究することができたため、研究の第1段階は終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的性質および示唆が得られ有効な観測量も評価できたが、より幅広いクラスの重力理論に応用できるようにするため、様々な重力理論における理論的性質および観測量の構築が必要となる。そのため、昨年度の結果を様々な重力理論に応用するとともに、新たな切り口を開く研究を行う。そのために、宇宙論スケールでの大規模構造の進化など、多方面での重力理論の性質を研究する必要がある。
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Research Products
(7 results)