2013 Fiscal Year Annual Research Report
稈・葉鞘のデンプン量が減少したイネ突然変異体を用いた糖・デンプン蓄積機構の解明
Project/Area Number |
12J06490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 昌樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イネ / デンプン / 分げつ角度 / 重力屈性 |
Research Abstract |
本研究では、葉鞘でのデンプン合成が抑制されたイネ突然変異体(agpl1)を用いて、イネの茎葉部での余剰炭水化物蓄積機構とその生育及び生産性上の意義を明らかにすることを目的としている。agpl1はデンプン合成の鍵酵素として知られるADP-Glucose pyrophosphorylase (AGP)をコードし、主に茎部で発現するとされている遺伝子であるOsAGPL1を欠損した変異体である。 昨年度までの実験により、agpl1はイネにおける茎部の重力応答器官の一つである葉枕(葉鞘基部)でのデンプン濃度の減少により、茎部重力応答性が低下し、それにより分げつ角度が増大した拡がった草型を示すことが明らかとなっている。そこで本年度はOsAGPL1と同じく、AGPをコードし、茎葉部で発現するとされているOsAGPL3を欠損した変異体(agp13)とagpl1を交配し、OsAGPL1とOsAGPL3の両者を欠損した二重変異体(agpl1/3)を作出し、その茎葉部におけるデンプン濃度や重力応答性、分げつ角度、生育および乾物生産能力を調査した。その結果、agpl1/3はagpl1よりもさらに葉枕におけるデンプン濃度と重力応答性が低く、分げつ角度はagpl1よりさらに増大していることが明らかとなった。このことはイネの分げつ角度は、茎部(特に葉枕)のデンプン濃度の減少程度により量的に制御され得ることを示している。またagpl1/3は茎部と葉身両者においてデンプン濃度が著しく低く、分げつ角度も大きいにも関わらず、生育や乾物生産能力は野生型とほとんど差がなかった。このことは、やや直立した草型が受光態勢に優れており、イネの生産性を高める上で有利であるとする従来の考えから予想される結果に反しており、イネの育種において目標とすべき理想的な草型とは何かという議論に対して一石を投じた結果となった。 また昨年度までの結果から、agpl1において茎部でデンプン合成が抑制されたことにより生じた余剰炭水化物の一部は、分げつ発生に使われた可能性が示唆された。このことを証明するため、agpl1の分げつ発生を抑制する実験に取り組んでいる。現在までのところ、受入研究室が保有しているイネの突然変異系統群の中から分げつ数が極端に少ない系統の単離に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デンプン畜積と分げつ角度、重力応答性に関する実験は概ね計画通りに進んだ。また遺伝的に分げつ発生を抑制し、糖と分げつ発生の関連性を明らかにする実験では、遺伝子組み換えや変異体の単離、交配など実験の特性上時間がかかるため目立った成果は出ていないが概ね順調に材料の作成が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
分げつ角度とイネの生産性についてさらに詳しく解析するため、agpl1/3の解析を受光態勢にも着目して行う。また昨年度作成した分げつ発生の少ない変異体とagpl1を交配し、その後代の糖・デンプン蓄積特性を分げつ数と関連させて解析を行う。
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