2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子アルゴリズムの大規模情報処理への有効性を『みる』ことによって検証する研究
Project/Area Number |
12J06501
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大坪 洋介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子揺らぎ / モンテカルロシミュレーション / 統計力学 / 誤り訂正符号 |
Research Abstract |
申請者は,情報処理課題における量子揺らぎの復号性能を調べた.特に本年度では,"誤り訂正符号"と"CDMA復調"に関して,理論的解析とモンテカルロシミュレーションを用いて研究を行ない,古典的な揺らぎによる復号性能と比較してどうなるかを調べた.この2つの情報処理課題は,ベイズ推定の枠組みで"符号⇔復号"の性質を論じることができ,このように確率的に定式化されたモデルはスピン系で記述できるため,統計力学を用いて解析を行うことができる.また,両者のモデルはスピン間の相互作用が確率的に記述されるスピングラス系になっているため,複雑なエネルギー構造を持ち,量子揺らぎによってエネルギー構造がどのように変化するか調べることも興味深い課題である.また統計力学を用いた解析は近似を含むため,モンテカルロシミュレーションによって有限次元の解析も同時に行い,理論解析の妥当性なども調べた. 以上の背景の下,申請者は,"誤り訂正符号"と"CDMA復調"における量子揺らぎを用いた復号アルゴリズムに関して,共通する次の3つのことを明らかにした.1.量子揺らぎで実現できる最適な復号性能は,古典的な揺らぎによって実現できる最適復号性能よりも劣る.2.古典揺らぎのみを用いた際に劣悪な復号性能であるパラメータ領域でも,量子揺らぎを利用して復号性能の回復を図ることができる.3.量子揺らぎと古典揺らぎは性質が異なり,系のエネルギー構造も非対称に変化させる. このような結論は,量子揺らぎ(横磁場)が情報処理に対して持つ一般的な性質だと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでで,申請者は量子揺らぎによる情報処理を解析的に調べた.この際に,同等に複雑なエネルギー構造を持つ系では,情報処理の復号性能に対して共通の性質を帯びることを明らかにした.したがって,当初の課題である量子揺らぎによるエネルギー構造理解を大きく発展させ,計画以上の成果を挙げている.また,このような成果はPhysical Review誌にも掲載され,IEEE Young Researcherawardも受賞している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,上記のような量子揺らぎの情報処理への有効性をさらに深く考察する.そのため,上記2つの情報処理課題に加え,画像修復アルゴリズムに対しても量子揺らぎによる復号性能を調べる.これらの結果を踏まえて,量子揺らぎによる情報処理への影響を系統的にまとめ,結論を出す予定である.
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Research Products
(8 results)