2012 Fiscal Year Annual Research Report
ジェットの変動性に基づく若い大質量原始星探査と質量降着機構の解明
Project/Area Number |
12J06525
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
元木 業人 山口大学, 時間学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大質量星形成 / 電波天文学 / VLBI / 原始星ジェット |
Research Abstract |
本年度は本プロジェクト立案の雛形となった天体G353.273+0.641に対して2011年度に国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を用いて行ったフォローアップ観測の結果について、3件の国際研究会において成果発表を行うとともに、英国の王立天文雑誌(MNRAS)より査読論文として出版した。同観測により検出された一酸化ケイ素輝線は水蒸気メーザーと非常に良く似た速度構造を示しており、水蒸気メーザーの高い変動性や異常な青方偏移卓越性がジェットや円盤など原始星周囲の構造と密接に関連していることが明らかになった。特に光学的に厚い降着円盤の存在が示唆されたことは同天体が非常に若い段階であることを強く示唆しており、本プロジェクトの背景を補強する重要な結果となっている。またさらに詳細な星周構造を調査を豪州所有の電波干渉計(ATCA)に対して提案し、追加観測の時間を得ることができた。 また多天体に対する水蒸気メーザーモニター観測を行う体制構築の一環として、自動解析プログラムの作成を行った他、北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡の山口大学からの遠隔観測試験などを行った。現在変動天体の候補である大質量原始星20天体に対して1-2週間に1回の高頻度モニター観測をすでに開始している。 さらに水蒸気メーザーの単一鏡モニター観測と並行し、ジェット本体の性質を調べるための観測提案を国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に対して行った。その結果、本年度は10天体に対して観測時間を獲得し一酸化ケイ素輝線や一酸化硫黄輝線などジェットのプローブとなる分子輝線の探査を行った。うち4天体についてG353.273+0.641と同様非常に高速なジェットを検出することができた。このことは青方偏移メーザーが、活発な質量降着伴う若い天体の良い指標なることを裏付ける結果であり、2013年度内に論文化を行う予定である。また今後残りの天体についても追加の観測提案を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部観測装置のトラブル等はあったものの、北海道大学11m望遠鏡の全自動観測化によって観測効率が飛躍的に向上したことから予定通り水蒸気メーザーの高頻度モニター観測が進行中である。また共同利用装置を用いた各種追観測に関しても無事に観測提案が採択され始め、継続的に成果を上げられる段階となっている。一方でトラブルにより単一鏡観測の始動が遅れたことから空間構造を調べるためのVLBI観測の始動も若干遅れ、平成25年度頭から観測を開始することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
単一鏡モニターが軌道に乗ったことから、今後は強度モニターに合わせたVLBI観測を進める予定である。また本計画のさらなる発展案として、水蒸気メーザーの変動時に伴って原始星本体の光度変動が起こるか否かを調べるために、山口大学および茨城大学の運用する2つの32m電波望遠鏡を用いた6.7GHzメタノールメーザーのモニター観測を追加し、すでにモニターを開始しているところである。
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Research Products
(13 results)