2012 Fiscal Year Annual Research Report
RNA干渉による細胞内情報伝達経路の修飾とミツバチ細胞への応用
Project/Area Number |
12J06537
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
北岸 靖子 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | RNA干渉 / 遺伝子導入 / がん遺伝子 / アレルギー / 細胞株化 |
Research Abstract |
RNA干渉を研究ツールとして活用することやその生化学的応用は広く試みられ、国内外で顕著な成果が上がっている。そこで申請者は、RNA干渉のミツバチ細胞などにおけるウイルス感染症への農学的応用を目指している。すでに、食用成分をベースとした細胞に低毒性である新規遺伝子導入試薬を用いることにより、特定の遺伝子(c-mycなど)が導入されたミツバチ初代培養細胞は継代培養が可能となった。また、RNA干渉を惹起させるDNAカセットを考案し、非コードRNAがどのようなメカニズムで働くのかという課題に対して、エフェクター分子の同定を踏まえて、非コードRNAの動作原理を解析した。さらに、遺伝子と試薬の混和溶液を霧状にして噴霧し、同時に強力な赤外線照射を行うことで、1メートル以上離れたシャーレ上の培養細胞に遺伝子導入できる装置を開発中である。種々の動物種でのフィールド応用も可能と考えられ、技術移転の可能性が高い。GFP遺伝子を精製し(1mg以上)トランスフェクションに使用可能な状態で保存している。実際に浮遊Daudi細胞を用いてGFP遺伝子を導入したところフローサイトメーターでおよそ15%の導入効率が得られた。現在も赤外線の波長や強度を変えつつ至適な条件を整えているが、これまでの実験結果から、遺伝子導入効率は、赤外線電球によって照射した場合、JurkatやDaudiヒト浮遊細胞での検討結果、およそ20%の上昇が確認された。赤外線照射による遺伝子導入効率の増加は、単に研究用途のみならず、蛋白質発現DNAやマイクロRNAなどの細胞調節機能誘導を介して、種々のウイルス感染対策などに使用できる。ヒトへの応用ばかりではなく、ペットや農作物などへの利用も十分可能であり、開発が進展すれば産業への社会貢献も大きいと思われる。この点に関しRNA干渉などのアレルギーへの応用について総説論文を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画を基本として、発展的な実験なども順調に進展している。それらの成果として、これまでに査読付き英語論文を既に3報も学術雑誌に発表しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子導入効率上昇を目指す細胞膜変化の解析を行う。カベオラは細胞が物質を取り込む場であり、カベオラの構成分子であるカベオリンの解析は、本研究のような遺伝子導入技術革新のためには欠かせない。細胞膜のくぼみ構造下で、リガンドレセプターの相互作用と情報伝達が3次元的にどのように行われるかを検討するため、カベオリンやSrcに対する特異抗体を用い、免疫沈降や蛍光細胞染色によって局在を確認すると共に、成長因子やインスリンそしてカルシウム負荷における変化を追跡する。またDNAカセット添加後RNA干渉が誘導される際に細胞のカベオラ構造やカベオリン局在にどの様な変化を生じさせるのかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べる。
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