2012 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素ガスおよびビスメタル化合物を用いた光学活性アミノ酸のワンポット合成
Project/Area Number |
12J06589
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
陳 建揚 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | CO_2 incorporation / α-amino acid / PhMe_2Si-Bpin / one-pot reaction |
Research Abstract |
二酸化炭素(CO_2)は安価で毒性が低く、有機化学の観点からは豊富に存在する有用な炭素源と見なされており、炭素求核剤とCO_2との反応は、カルボン酸及びその類縁体の最も効率のよい合成法の一つである。中でも、CO_2固定化反応により、温和な条件下でα-アミノ酸を合成する手法は非常に魅力的である。我々は2011年に、N-Boc-α-アミノスルホンに対して、10気圧のCO_2雰囲気下、TMS-SnBu_3とCsFを作用させることで、N-Boc-Ct-アミノ酸誘導体をワンポットで合成することに成功し報告している。しかしながら、全く新しい反応系の開発に成功したものの、毒性の高いスズ試薬を用いるなどの問題点があり、我々はそれらを克服するため、さらなる反応条件の検討を行った。すなわちスズを含まないビスメタル試薬を検討したところ、先と同様の反応系に対して、PhMe_2Si-Bpinが最も高い活性を示すことがわかった。この結果を基に、さらに反応条件の最適化を行ったところ、Bronsted酸触媒がワンポットカルボキシル化反応を促進することが明らかとなった。すなわち触媒量(20mol%)のTsOH・H_2Oを添加することで、5気圧のCO_2雰囲気下、室温というより温和な条件で目的のカルボキシル化が速やかに進行し、α-アミノ酸誘導体が高収率で得られた。この最適条件を基に、続いて基質適用範囲の検討を行った。その結果、α-アリール-α-アミノスルホンのみならず、TMS-SnBu_3を用いた反応系では適用できなかったα-アルケニル-α-アミノスルホンもPhMe_2Si-Bpinを用いた際には良好な収率で目的のα-アミノ酸誘導体が得られた。また、反応を不活性ガス雰囲気下で行うと、α-アミノシランが得られた。この結果は、PhMe_2Si-BpinとCsFからシリルアニオン等価体が発生していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)Ph_2MeSi-BpinはTMS-SnBu3よりも毒性が低い。2)スズよりケイ素の方がフッ素との親和性が高いため(結合エネルギー:Si-Fは565 kJ/mol、Sn-Fは414kJ/mol)、フッ素アニオンに対するα-アミドケイ素中間体の反応性がスズのものより高くなる。これにより、α-アミドケイ素中間体からのカルボキシル化が室温、低い二酸化炭素圧下で進行する。3)基質適用範囲が拡大した。α-アリル-α-アミノスルホンだけでなく、α-アルケニル-α-アミノスルホンもこのワンポット反応でカルボキシル化が進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
ワンポットカルボキシル化反応は円滑に進行したが、ビスメタル試薬の合成に手間がかかるため、安価で入手しやすい試薬を用いたより有用なカルボキシル化反応の開発が望まれる。したがって、遷移金属触媒を用いたカルボキシル化による、α-アミノ酸の合成方法を開発する。
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Research Products
(3 results)