2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06611
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 俊資 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | リビングアニオン重合 / ジビニルベンゼン類 / 選択重合 / 金属アルコキシド |
Research Abstract |
本年度は主にp-ジビニルベンゼンのリビングアニオン重合機構を明らかにすることを目的に研究を行った。 ジビニルベンゼン(DVB)類に代表されるジビニル型モノマーの重合は、一般に成長と架橋が同時に進行するため急速にゲル化が進行するとされており、その制御は非常に困難である。近年になり我々は、p-DVBの重合系に大過剰のtert-BuOKを添加すると側鎖ビニル基への副反応は著しく抑制され、設計通りの一次構造を有する可溶性のポリマーが定量的に得られることを見出した。またブロック共重合が定量的に進行したことから、この重合は選択的かつリビング的に進行していることを見出した。 このような背景から、今年度我々はp-DVBのリビングアニオン重合において対カチオン・添加剤・反応温度の各条件を変化させ、これらの及ぼす影響について検討したところ、共通イオン効果やイオン半径の大きな対カチオン種を採用することなどによって末端イオン対の解離を抑制し、さらに嵩高い添加剤が末端イオン対近傍に会合することで、副反応は抑制され重合が制御される傾向が見出された。また添加剤として種々のアルコキシド塩を用いて比較したところ、副反応の抑制効果は分子構造やpKaには大きく依存しないことがわかった。さらに反応温度を従来の-78℃から-95℃に下げることで、リビングポリマーアニオンがより長時間安定に存在できる系を実現した。 これらのジビニル型モノマーから生成するポリマーは各モノマーユニットの側鎖に高反応性のビニル基を有していることから、種々の化学修飾により新規の官能基化ポリマーが合成できると期待されており、学術的のみならず工業的な観点からもきわめて興味深いポリマーである。これらの結果は、ジビニルモノマーのみならず様々な含官能基モノマーのリビングアニオン重合を行うために必要な重合系・添加剤の設計指針の一つになり得ると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Lewis塩基や配位子を添加することによる影響や、対カチオン依存性について詳細に検討を行い、重合制御の機構について考察した。また活性末端を適切にキャップすることで高反応性のポリマーアニオンをより長時間安定に取り扱えることが見出されつつあり、次年度以降、分岐高分子に応用しうる可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
重合挙動についてさらに検討し、より穏和な条件で重合制御を達成することを目的に、これまで重合添加剤として用いてきた金属アルコキシド類のほか、種々のLewis塩基・Lewis酸類を採用し検討する。対カチオンCsの重合系を引き続き検討し、重合挙動に及ぼす影響を検討する。 また現時点で判明している最適重合条件をもとに、ポリ(p-ジビニルベンゼン)セグメントを有する種々のブロック共重合体や分岐高分子の合成を試みる。 さらにジビニルベンゼンに類似した構造を有するジビニル型モノマー類の合成とアニオン重合を試み、p-ジビニルベンゼンと重合挙動を比較する。
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Research Products
(8 results)