2013 Fiscal Year Annual Research Report
GEMS衛星によるブラックホールのX線偏光観測の実現
Project/Area Number |
12J06671
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉川 瑛文 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 放射線検出器 / ガス電子増幅フォイル / X線宇宙物理学 / X線偏光計 |
Research Abstract |
2013年度はブラックホール(BH)からのX線の偏光観測を目指し、恒星質量BHのX線スペクトルの状態遷移の解析と、X線偏光計の校正試験のため、放射光施設のX線の偏光度測定を行った。 BHからのX線は、ブラックホール近傍に形成された降着円盤からの黒体放射(0.01-4keV)と、降着円盤の周辺にある熱プラズマ(コロナ)からの逆コンプトン成分(10keV以上)とがある。X線スペクトルには、伴星からの降着流量が増え円盤が形成されて、4keV程度までの放射が卓越したSoft状態と、コロナからの放射成分が優勢になったLow状態がある。状態の変化はX線偏光度を大きく変える可能性があり、偏光観測には非常に重要である。恒星質量BHのSwift J1753.5-0127の短時間(20日程度)のLow状態からSoft状態への遷移の様子を、Swift衛星とMAXIによって初めて捉え、数週間程度で降着流量が変動していたことを突き止めた。過去のSwift J1753.5-0127の観測結果のなかで、最もブラックホールの近傍までに降着円盤が形成されていることが分かった。以上から、数週間程度で状態遷移した後にすぐに状態が元に戻った様子が初めて観測され、降着流量の変動と状態遷移の体系的な研究において重要な結果を得ることができた。以上の結果を、Swift国際会議とSuzaku-MAXI国際会議にて、それぞれ発表した。 我々が開発を進めているX線偏光計の較正試験に用いる、ブルックヘブン国立研究所のX線放射施設のX線偏光度の測定を、平成25年10月27日から平成25年11月14日の間に行った。放射光施設からのX線ビームの偏光度を定量的に評価するために、我々はコンプトン散乱を利用した偏光計を製作し、コンプトン散乱後のX線強度を測定し偏光度を導出した。現地では、米国側のスタッフらと綿密な調整をして、滞りが無いように実験を進めた。以上の結果として、4.5から10.0keVのエネルギーに対応するX線の偏光度を、約80%と見積もった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GEMS衛星計画のX線偏光計の較正試験を実施するために用いる、放射光施設のX線偏光度測定を実施し、その偏光度を得ることができた。また、ブラックホールの観測的研究においては、GEMS衛星計画において、観測予定である、恒星質量ブラックホールの観測データを解析し、降着円盤とコロナの状態遷移の詳細な解析をすることで、X線偏光観測の可能性を調査することができ、偏光観測の可能性を示すことができた。以上の理由から、研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ブラックホールのX線偏光観測の実現に向けて、ブラックホールの観測的研究に注力する。GEMS衛星計画で、最初に観測される、恒星質量ブラックホールである、CygX-1のX線スペクトルの短時間変動の様子を調査することで、ブラックホール近傍のジオメトリの変化を詳細に調査する。スペクトルの変動は、伴星からの降着物質の流量の変化に伴うジオメトリの変化を示しており、X線の偏光度を決定するジオメトリを調査することは、GEMS衛星のブラックホールのX線偏光観測の実現に向けて、非常に重要である。以上の結果を、学術論文としてまとめるとともに、博士論文としてまとめる。
|
Research Products
(3 results)