2012 Fiscal Year Annual Research Report
修正重力理論に基づく暗黒エネルギー模型の構築とその観測的な制限
Project/Area Number |
12J06770
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加瀬 竜太郎 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙論 / 修正重力理論 |
Research Abstract |
私は世界中で近年活発に研究されている修正重力理論に基づく無矛盾な暗黒エネルギー模型及びその拡張された模型において,どのようにヴァインシュタイン機構が働くのかを研究した.修正重力理論は,大スケールでの重力理論の修正により近年の観測から示唆されている宇宙の後期加速膨張を説明しうる一方で,局所重力実験の結果から小スケールでは一般相対論的振る舞いを回復することが要求される.このように一般相対論的振る舞いを回復するための機構としては,ヴァインシュタイン機構というものが考えられている.この機構はスカラー場の非線形相互作用項によって引き起こされ,ヴァインシュタイン半径と呼ばれるスケールの十分内側では重力理論の修正の効果は抑制され,第五の力の伝播を防ぐことが可能となる.DGPブレーンワールド模型はこの機構が働くが,宇宙論的には観測の複合解析との一致の困難さ等の問題がある.よって,我々はこの機構が一般的な修正重力理論においてどのように働くのかを研究した. 具体的には様々な修正重力理論を内包する一般的な作用であるHorndeski作用を用い,物質場の存在する球対称な時空について解析を行い,ヴァインシュタイン機構が正常に働くための一般的な条件を導いた.また,ガリレオン重力理論及びその拡張された模型に関して具体的にどのようにヴァインシュタイン機構が働くのかを明らかにし,一般相対論的な振る舞いを回復しかつ局所重力実験との整合性をもつ具体的なスケールを求めた.我々はこれらの結果を弦理論において現れる低エネルギー有効作用に適用し,ヴァインシュタイン機構が働く具体的なスケールについて議論した. 当研究に関しては,下に記す通り二回の口頭発表を行った.論文に関しては現在執筆中であり,完成し次第,論文誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析はすでに終わっており,国際会議,及び国内の物理学会で口頭発表を行っている.この研究で得られた結果は論文として執筆中である.よって,これを終わらせることが目下の急務である,論文の執筆に時間がかかっているのは私の英語力及び論文執筆能力の未熟さによるものであり,今後はこれらの能力の向上も意識し一層の努力を重ねていく.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,引き続き修正重力理論に基づく無矛盾な暗黒エネルギー模型及びその拡張された模型において,その観測及び実験からの制限付けを主な目的とする.具体的にはCosmoMCをはじめとするデータ解析の手法を習得し,この技術及び数値コードを用いて今年公開されたPlanck衛星による宇宙背景輻射の,及び大規模構造,重力レンズ,超新星,バリオン音響振動などの最新のデータを駆使して,修正重力理論に基づく無矛盾な暗黒エネルギー模型に課せられる具体的な制限を導き,模型の有効性を調べていく.
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Research Products
(4 results)