2013 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトを標的とした抗うつ薬の新規薬理作用に関する研究
Project/Area Number |
12J06852
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梶谷 直人 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 抗うつ薬 / アストロサイト / FGF2 / EGR1 |
Research Abstract |
近年、うつ病の病態・抗うつ薬の治療効果にグリア細胞のひとつであるアストロサイトが重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究では、アストロサイトを標的とした抗うつ薬の作用メカニズムを解明することを目的に研究を行っている。本年度は、ラット初代培養アストロサイトを用いて、抗うつ薬(アミトリプチリン)による線維芽細胞増殖因子2 (FGF2)の産生メカニズムを解明する目的で以下の通り実施した。1、培養アストロサイトにおいて、アミトリプチリンを処置することにより転写因子earlyg rowthresponse 1 (EGR1)の発現が1時間をピークに有意に増加することが明らかになった。さらに、siRNAによりEGR1をノックダウンすることで、アミトリプチリンによるFGF2の増加がみられなくなったことから、EGR1がFGF2産生メカニズムに重要な役割を果たす因子であることが示唆された。一方で、このEGR1の増加作用は培養神経細胞では見られなかった。2、EGR1を指標にアミトリプチリンによる作用メカニズムを薬理学的検討により調べたところ、ERK1/2シグナルを介していることを確認した。さらに、培養アストロサイトにおいて、ERK1/2のリン酸化がアミトリプチリン処置後10分をピークに増加するのに対し、培養神経細胞においてはリン酸化にも影響がないことを確認した。 以上のことから、アミトリプチリンはアストロサイトに作用することで、急性のERK1/2のリン酸化を介したEGR1の発現増加を引き起こし、FGF2の発現を制御している可能性が示唆された。FGF2には抗うつ薬様効果の報告があることから、抗うつ薬がアストロサイト特異的に作用して、抗うつ効果をもたらす可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アストロサイトを標的とした抗うつ薬の作用機序に関わる新たな因子としてEGR1を同定でき、この成果を第43回日本神経精神薬理学会・第23回日本臨床精神神経薬理学会合同大会で発表した。in vitroの実験系では平成24年度に計画した実験内容に沿って検討を行えた。動物を用いたin vivo実験系での検討を立ち上げ、検討段階中であることから、当初の検討内容の6-7割を検討できたと考え、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アストロサイトにおけるEGR1を指標に抗うつ薬の更なる作用メカニズムの解明を行うと共に、in vitreの実験系で確認したEGR1の発現増加作用が脳内でも起きているのか確認するために、in vivoの実験系で免疫組織化学法を用い確認を行う予定である。最終的には、抗うつ薬によってアストロサイトで駆動される今回同定したEGRI/FGF2のシグナルが、うつ病モデル動物における抗うつ薬による行動変化に重要な役割を担っているか検討を行う予定である。
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Research Products
(5 results)