2012 Fiscal Year Annual Research Report
古代アンデス人の生活復元のための高精度なコカの葉利用の推定と産地同定
Project/Area Number |
12J06868
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
瀧上 舞 山形大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | コカの葉 / 古代アンデス / コカイン分解物 / AMS / 放射性炭素年代測定 |
Research Abstract |
今年度は古代人のコカの葉利用の調査を行うために、先ず文献調査を行った。先行研究で行われた実証実験の論文から、摂取コカインの量による体組織内でのコカイン分解物の蓄積量の関係を確認した。また、古代アンデスの人のコカの葉利用方法による精製コカイン対応量についての論文も確認した。このことにより、毛髪中のコカイン分解物の量を調べることで、どのくらいのコカの葉利用量だったかを同定できる。また、ペルー滞在中に自身もコカの葉の咀嚼を量・期間を定めて行っており、次年度に申請者自身の毛髪の分析を行うことで、限られた期間に一定量のコカの葉を利用したときの毛髪中へのコカイン分解物蓄積量を確認する予定である。従来の研究では、一定量摂取した時の血中濃度しか調べられておらず、毛髪に蓄積される実証実験は初めてとなる。また古代アンデス人の実際のコカの葉利用量は推定されていなかったが、本研究で実際に用いていたコカの葉の枚数や頻度が推定できる可能性がある。しかし、当初研究協力の同意を頂いていたスイスのStaub博士から施設の装置不備のために研究不可との連絡が来てしまい、今年度はコカイン分解物の微量定量分析を行うことが出来なかった。現在、微量のコカイン分析ができる他の研究者との研究提携を進めている。 コカイン分解物の定量分析は進められなかったが、その研究費を用いて古代アンデス試料の放射性炭素年代測定を行った。山形大学理学部が所有している最新のAccelerator mass spectrometry (AMS)を用いて手元にあるほぼ全てのアンデスのヒト遺存体の年代を測定することができた。また、申請者自身で実験を行わせて頂き、当該施設での実験手法を学ぶことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書の提出時点で共同研究の了承を得ていたStaub博士から研究延期を提示されてしまったため、毛髪中のコカイン分解物の分析が進められていないのは厳しい。一方で、その分の時間と研究費を用いてAMSでの試料の年代の確認ができ、また文献調査も進めることが出来た点で研究の進展を確認できる。さらに自分の毛髪を用いた定量利用でのコカイン分解物蓄積の試料も作成しており、次年度の定量分析を見据えた用意も着実に整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、南米ミイラの毛髪を用いコカイン研究者への連絡を試みている。また、考古科学分野とは離れた応用化学や医学的な薬物研究の最先端の微量コカイン検出の先生方との共同研究も検討している。平成25年度中には自分の毛髪やミイラの毛髪のコカイン分解物分析が行える予定である。 また、8月には世界ミイラ会議にも出席し、更なるミイラの毛髪試料の入手について交渉する。
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