2012 Fiscal Year Annual Research Report
エスニック集団間の差異化と連帯-多文化共生型コミュニティ・モデルの構築を目指して
Project/Area Number |
12J07006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土田 久美子 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 多文化共生 / マルチエスニック・コミュニティ / エスニック・マイノリティ / 連帯 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、異なるエスニック集団が持つ社会的資源の多寡に基づくヒエラルキーを可能な限り回避しながら、複数のエスニック集団から構成されるコミュニティの形成が可能となる多文化共生モデルを構築することにある。とくに、本研究は、最終的に日本社会への適用可能性を視野に入れた多文化共生モデルの構築を目指している。この点に鑑みて、本年度は(1)アメリカ合衆国ロサンゼルスの事例、および(2)日本国内、とくに東北地方の事例を対象として、以下のとおり資料や先行研究の検討、および調査分析を行った。 本研究がロサンゼルスをフィールドとして、調査分析を進めているのは、複数のエスニック集団の連帯を基盤としたリトルトーキョーにおけるマルチエスニック・コミュニティ形成のプロセスと、日系とムスリム系を中心とした草の根レベルでの共生を目指す運動である。本年度は、まず、異なるエスニック集団の連帯に基づく運動に関する先行研究を、とくにロサンゼルス都市圏を対象とした研究を中心にレビューを行った。その成果として、先行研究においては、構成員の特徴によって共有される課題が異なる点に注目した。それらの先行研究のレビューと並行して、本年度は特に日系とムスリム系による運動に関する調査・分析を行った。特に、参与観察とインタビューを分析し、いかなる問題の枠組みにおいて両者が連帯を形成されているのか、その形成プロセスと連帯を中心的に明らかにし、日本社会学会で報告を行った。 さらに、日本社会への応用を視野にいれ、日本の多文化共生に関する状況について、先行研究をレビューしながら、東北地方において調査も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・対象地でのフィールドワークが順調に進んでおり、また、データを整理し、今後に調査・分析する際の分析視角がより明確になっているからである。 ・また、研究内容をさらに展開させるためのフィールド調査へとも発展しているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
・今後は、平成24年度に収集したデータと分析から得られた知見を、論文として発表する。 とくに、昨年は学会報告を中心に成果発表を行い、他の研究者との議論を発展させた。その点を踏まえて、論文を作成・発表する。 ・今後は、対象者の属性などにより丹念に目を配って、ライフヒストリー収集も行うことで、コミュニティに関する試みへの参加経緯をも明らかにする。 ・そのうえで、都市社会学分野での理論研究を行うことによって、より研究の理論的側面を精緻化する。
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