2012 Fiscal Year Annual Research Report
高配向ナノチューブとグラフィン結合技術を用いた超軽量高強度カーボン材料の創製
Project/Area Number |
12J07007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西坂 光 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カーボンナノチューブファイバー / 高強度炭素材料 / グラフィン結合 / ホウ素導入 / ハロゲン化 |
Research Abstract |
本研究ではホウ素あるいはハロゲンを用いることでCNT表面を活性化し、CNT間に共有結合を形成させ、バルク体の機械特性を向上することが目的である。CNT間を結合させるためには物理的にCNT同士が近接していることが必須であり、本年度はCNTsの密着配向技術として多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube:MWCNT)ファイバーを作製した。具体的には化学気相蒸着法によってシリコン基板上に合成した垂直配向状のMWCNT膜から連続的にMWCNTsを引き出し、回転させながら紡糸する装置を組み立てた。作製したMWCNTファイバーの引張試験を行い、機械特性を評価した。引張試験ではサンプル問でのわずかな形状の違いによって、測定値が大きく異なるため、サンプル形状のバラつきを考慮した測定値の精確さを定量的に見積もることは重要である。引張試験に用いたロードセルの不確かさを評価することで、機械特性値の精確さを算出した。 ホウ素導入の予備実験では、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotubes:SWCNTs)およびMWCNTsを用いて、Ar雰囲気下、1100℃、4時間のホウ素導入を行った。電子エネルギー損失分光法によって元素分析を行った結果、硝酸還流処理または混酸(硫酸:硝酸=3:1)超音波処理を行ったSWCNTsを原料とした場合においてのみ、ホウ素を検出することができた。従って、処理温度が1100℃においては、チューブの直径、層数に関連する表面活性エネルギー、および官能基やそれに関連した欠陥サイトの活性エネルギーがナノチューブ炭素骨格へのホウ素導入に影響すると考えられ、反応性の大きいSWCNTsの方がホウ素は導入されやすく、安定であるMWCNTsにおけるホウ素導入ではより高温度での処理が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における要素技術の1つである「多層カーボンナノチューブファイバー作製」を達成した。また、ホウ素導入における予備実験により密着配向カーボンナノチューブへのホウ素導入の指針を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
MWCNTファイバーを作製することに成功し、ハロゲンおよびホウ素を用いることで柔軟性を保ちながらCNT結合処理を行う準備を整えることができた。次年度は、MWCNTファイバーへのフッ素およびホウ素処理を試みる。具体的には、MWCNTファイバーの見掛け密度を制御することで、表面に露出しているCNT数やCNT間の接触面積を変化させ、ハロゲンおよびホウ素によるCNT間結合の評価、および結合による物性(機械強度、電気特性)への影響を評価する。
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