2012 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮政府の対外政策研究(1882~1894):1887年の変化に着目して
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12J07017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 万佑子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近代朝鮮 / 朝貢冊封 / 対外関係 / 高宗 / 統理交渉通商事務衙門 / 統署日記 / 統椽日記 / 神貞大王大妃 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に沿って「統理交渉通商事務衙門についての検討」を行った。具体的には、(1)1887年に「統理交渉通商事務衙門続章程(以下、続章程)」が作られた背景と、(2)統理交渉通商事務衙門の構成員の変化について検討した。その結果、(1)については「統理交渉通商事務衙門章程」と「続章程」の比較分析と漢城駐在の各国代表との文書往来件数の変化から、「続章程」は1884年以降の外交業務の急増に伴って増員した「主事」を業務別に再配置するためのものであることが分かった。(2)については、統理交渉通商事務衙門の構成員のうち外交事務を担当した下級官僚である「主事」に着目し、一日当たりの出勤人数の変化や人事異動を明らかにし、「主事」が1892年に「総務」という役職に改編されたことを指摘した。(1)(2)の結果から、統理交渉通商事務衙門の外交事務は1887年と1892年で区切って分析することが有益であると分かった。また、(1)(2)の作業の中で、統理交渉通商事務衙門の職務日記はこれまでの研究で広く用いられていた『統署日記』だけではなく『統橡日記』も重要な史料であることも示した。 これらの研究を遂行するために、ソウル大学校奎章閣図書館を何度も訪れ、統理交渉通商事務衙門に関係する史料を閲覧・収集した。以上の成果は「朝鮮近代における対外実務担当者に関する研究:『統理交渉通商事務衙門続章程』制定に着目して」という題目で朝鮮史研究会関東部会月例会(2012年9月)で発表し、「朝鮮近代の外交実務担当者に関する基礎的研究:『統理交渉通商事務衙門続章程』制定に着目して」という題目で『アジア地域文化研究』第9号に掲載されることが決定した。 また、2012年11月に2週間の日程でアメリカへ行き、ワシントンの国立公文書館(NARA II)で朝米関係文書の閲覧・収集とニューヨークの市立図書館でアレン文書の閲覧・収集を行った。これらの史料は次年度の研究課題の遂行のために用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究計画」に沿って研究課題をすすめることができ、学会発表と投稿論文というかたちでその成果を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「在外公使派遣の経緯と各国の反応」というテーマで1887年を中心に研究する計画であるが、現段階で収集した史料からはこのテーマで先行研究との違いを示すことが難しいと予想される。 一方で、本年度の研究成果から朝鮮政府の外交事務に関して1892年前後を分析する必要があること、またアメリカ国立公文書館(NARAII)で閲覧・収集した駐韓アメリカ公使館記録で各国代表が1890年の神貞大王大妃の死去に注目していたことが分かった。このような理由から、次年度は神貞大王大妃の死去をめぐって生じた朝鮮の対外関係を研究することを計画している。
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Research Products
(4 results)