2012 Fiscal Year Annual Research Report
DNAヘリカーゼRECQL5の組換え抑制における分子機構の解明
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12J07075
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細野 嘉史 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | RECQL5 / DNAクロスリンク修復 / DNA相同組換え / ファンコニ貧血 / BRCA2 / がん抑制遺伝子 / シスプラチン / 染色体異常 |
Research Abstract |
DNA損傷を正確に修復する系が相同組換え(Homologous recombination;HR)であり、HR関連遺伝子における変異は細胞のがん化を促進する原因となり得る。HR関連遺伝子の一種としてRecQヘリカーゼファミリーがあり、高等真核生物では5つのRecQが存在する。このうちの1つであるRECQL5を欠損したノックアウトマウスが高発がん性を示すことから、がん抑制因子としてゲノムの安定性維持に寄与することが示唆されていた。また生化学的解析により、RECQL5が組換えの必須因子であるRAD51と結合することが示されているものの、その詳細な分子機能は不明のままであった。本研究において、RECQL5のがん抑制因子としての機能とHR機構との関連を細胞レベルで検討し、組換えの制御や正確性にどのように寄与しているか解明することを目指した。 本年度は、(1)RECQL5の組換えを抑制する機能と、各因子との相互作用に関連があるか解析する、(2)遺伝子破壊細胞を用いた遺伝学的解析により、DNA架橋傷害の修復経路におけるRECQL5の作用点を明らかにする、という2点に焦点をおいて研究を実施した。申請者のこれまでの研究により、RECQL5遺伝子破壊細胞はシスプラチンなどのDNA鎖間クロスリンク(interstrand crosslink;ICL)損傷を誘導する薬剤に高感受性を示すことが示されている。RAD51と結合できない変異型RECQL5、およびヘリカーゼ活性を持たない変異型RECQL5では薬剤感受性を相補できないことが判明し、RECQL5がICL修復において機能するにはRAD51との結合およびヘリカーゼ活性が必要であることが示唆された。次に、RECQL5がICL修復中の各反応経路においてどの段階に関わるか調べるために、RECQL5/RAD17、RECQL5/FANCCおよびRECQL5/BRCA2二重遺伝子破壊株を作製し薬剤感受性の遺伝学的解析をおこなった。その結果、RECQL5とBRCA2はICL修復においてepistaticな関係にあることが示された。さらに、RECQL5遺伝子破壊株ではRAD51-fociが滞留し、速やかに消失しないことも判明し、RECQL5はBRCA2に依存したICL誘導性HR修復の後期過程で機能し、修復を促進する可能性が初めて示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二重破壊株を用いた遺伝学的解析により、RECQL5の細胞内におけるICL修復中の作用点を推察できた。 また、間接免疫染色によるRAD51-fbciの検出系を当研究室で確立し、RAD51フィラメントの細胞内動態を観察することが可能となった。RECQL5がICL修復において機能する上で、RAD51結合能の重要性も明らかにすることができ、平成24年度の研究実施計画は概ね実践できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、作製の完了したRECQL5/RAD54二重遺伝子破壊株を解析しICL修復後期におけるRECQL5の機能を探りたいと考えている。また、ICL誘導性HRの正確性を評価し、RECQL5の有無により組換えの質の変化が生じるか調査する予定である。さらに、「RECQL5欠損細胞において実質的にゲノムDNAを傷つけている物質は何か?」という課題の解明を目標に研究を進めたいと考えている。具体的には内因性のアルデヒドをその標的と考えており、アルデヒドを用いた薬剤感受性試験等をおこなう予定である。
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Research Products
(2 results)