2012 Fiscal Year Annual Research Report
さまざまな細胞種の細胞シート作製を実現する次世代型温度応答性培養基材の開発
Project/Area Number |
12J07141
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松坂 直樹 東京理科大学, 大学院・基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 温度応答性表面 / RAFT重合 / 末端官能基 / ポリマーブラシ / 細胞接着 |
Research Abstract |
本研究では、種々の組織由来の細胞に対し細胞シートを調製しうる新規温度応答性高分子ブラシ表面の設計とその表面上での細胞応答を通じ、表面設計指針を明らかにすることを目的とする。この温度応答性高分子ブラシ表面を作製するためにSI-RAFT重合を用いており、PIPAAm鎖の末端には疎水性官能基であるドデシル基が修飾され、様々な機能性官能基に置換が可能である。PIPAAmは末端官能基の性質により、下限臨界溶液温度(LCST)が高温または低温にシフトすることが知られており、基板上のPIPAAm鎖においても末端官能基の親・疎水性の違いが温度変化によるPIPAAm鎖の水和・脱水和挙動にともなうコンフォメーション変化、および細胞の接着・脱着挙動に影響を与えることが予想される。平成24年度は親水性のマレイミド基に置換し、末端官能基の親・疎水性の違いがPIPAAm鎖の性質および細胞の接着・脱着挙動に与える影響について検討を行った。その結果、31℃で培養した場合、ドデシル基を有する表面にウシ頸動脈由来血管内皮細胞は接着したが、マレイミド基を有する表面では細胞の接着は抑制された。これは表面の濡れ性が影響していると考えられ、静的接触角測定より、昇温条件ではドデシル基を有する基板は31℃でマレイミド基の基板と比較して疎水性を示した。これはドデシル基ではLCSTが低温側にシフトしたことでPIPAAm鎖が脱水和・凝集し、マレイミド基では高温側にLCSTがシフトしたことでPIPAAm鎖が水和・伸長した状態だったと考えられる。一方で、マレイミド基を有する基板は33℃以上で細胞が基板上に接着した。また、両基板共に低温処理により細胞シートの回収に成功した。以上より、PIPAAm鎖の末端の化学構造を変えるだけで、温度による基板の性質および細胞の接着・脱着挙動を制御することに成功した。これにより、異なる末端官能基による細胞接着温度範囲の違いを利用した、様々な細胞種に応じた表面設計の指針を議論することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はPIPAAm鎖における末端官能基の親・疎水性の違いが、PIPAAm鎖の性質および細胞の接着・脱着挙動に与える影響について検討を行った。その結果、基板上のPIPAAm鎖のコンフォメーション変化および細胞の接着可能温度領域の制御に成功した。この結果はPIPAAm鎖の鎖長・密度の制御以外に、細胞シート作製における表面設計において新しい指針が成り立つことから、計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、PIPAAm鎖の末端官能基の性質を変えるだけで、細胞の接着可能温度領域を制御することに成功している。今後は接着可能温度領域の制御による種々の組織由来の細胞に対する新規温度応答性高分子ブラシ表面の設計について検討を行う。具体的には、末端官能基の置換が可能なことから、より親水性または疎水性度の大きい機能性官能基、細胞接着性ペプチド(RGDS(Arg-Gly-Asp-Ser)、YIGSR(Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg)など)といった生理活性物質、特定の波長の光を吸収する金属ナノ粒子、などを末端または基板表面に導入することで、種々の組織由来の細胞における基板上への接着挙動および細胞シート回収に与える影響について検討する。
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Research Products
(9 results)