2013 Fiscal Year Annual Research Report
生細胞内反応パラメーターに基づくフィードバック分子機構の定量解析
Project/Area Number |
12J07147
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
定家 和佳子 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛍光相互相関分光法 |
Research Abstract |
Ras-ERK情報伝達系は様々な腫瘍の発生に関与している。しかし、Ras-ERK情報伝達系はきわめて多くの反応からなる複雑なネットワークであるため、全体像の理解は困難である。そこで本研究では、シミュレーションの構築に必要なパラメーターを生細胞内で実測し、得られたパラメーターをもとにRas-ERK情報伝達系のシミュレーションモデルの構築および検証を行うことを目指す。以上を踏まえ、本年度は以下の2点において研究を実施した。 (1) Ras-ERK情報伝達系のシミュレーションモデルの数値解析 まず、前年度に得たパラメーターをもとに、Ras-ERK情報伝達系のモデルを構築した。このモデルを使って、数値解析を行った。数値解析には、甑TLABを利用した。その結果、「細胞内でShcがEGFRに複数個結合することが、Ras-ERK経路の活性化に重要である」という可能性を示唆するものである。 (2) EGFRに対するShcのStoichiometryの検証 次に、前述の仮説「細胞内でShcがEGFRに複数個結合することが、Ras-ERK経路の活性化に重要である」を実験的に検証することを試みた。EGFRのY1138、Y1172、Y1197はそれぞれ過去の論文でShcとの結合が知られている部位である(Jones RB et. al., Nature, 2006)。すなわち、もしShcがEGFRに複数個結合し、それがERKの活性に重要だとしたら、図5のWTから3Fにかけて段階的にERKの活性が減っていくことが予想される。このことを、ウェスタンブロッティングとERKの活性を測定するFRETプローブであるEKARのイメージングを用いて確認を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究で、蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いて生細胞内で解離定数値(Kd値)を測定する方法を開発し、パラメーターを取得した。当該年度ではこのデータを使って、Ras-ERK情報伝達系の理解につながる一定の成果を挙げることができた。その成果は以下の2点に分けることができる。(1)Ras-ERK情報伝達系のシミュレーションモデルを構築したこと、(2)モデルの解析から得られた結果を実験的に検証したこと。これらの研究成果については現在論文執筆中である。また、上記の研究成果を国内外での学会で発表した。特に2013年10月に実施された海外学会ではポスター賞を受賞した。これは次年度以降の研究の進展につながる有意義な機会だったといえる。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Ras-ERK情報伝達系のモデルの精度の向上 現在、作製したモデルにはまだ定量されていないパラメーターが含まれている。そこでこれらのパラメーターについても定量し、Ras-ERK経路の評価系の精度を上げることでがん化の制御に効果的な標的分子や方法を予測したい。 (2) FCCSの適用範囲の向上現在、FCCSを用いて生細胞内でKd値を測定する方法は、細胞質で発現するタンパク質の1:1のペアでしか測定することができない。そこで二の方法を膜上で発現するタンパク質問の相互作用や三者複合体の相互作用の大きさの測定に使えるようにし、適用範囲を広げたい。また、この方法は分子を固層化する必要がなく検出感度も高い。このことから、タンパク質一化合物間の相互作用解析への適用、すなわち創薬への活用が期待される。
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Research Products
(2 results)