2012 Fiscal Year Annual Research Report
蛇紋岩の高温高圧変形実験に基づくスロー地震発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
12J07168
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡崎 啓史 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スロー地震 / 蛇紋岩 / 高間隙水圧 / 脱水反応 / 剪断変形 / 沈み込み帯 / 地震 / 摩擦実験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高温高間隙水圧条件下で蛇紋岩の変形実験を行い、沈み込み帯で起こっているスロー地震発生機構を物質科学的側面から解明することである。本年度は前述した研究目的を達成するために、高温高圧条件下にて蛇紋岩の三軸変形実験を行い、温度(常温~650℃)変形速度(0.01~10μm/s)および間隙流体圧(0~200MPa)の範囲で蛇紋岩の力学特性の変化をしらべた。蛇紋岩は脱水条件(本研究の圧力条件では600℃)よりも少し低温から勇断変形に伴い勇断集中域に局所的に脱水反応が起こることが知られているが、この勇断に伴う脱水により生じる不均一な構造が通常のスティックスリップ(実験室で起こすことのできる模擬地震現象)よりも継続時間の長いスロースティックスリップを引き起こすことが分かった。天然で発生しているスロー地震は継続時間と地震モーメントが比例関係にあることが知られているが、本研究で確認されたスロースティックスリップのスケーリングにも同じ法則が適用できることから、スロー地震も実験室で再現されたスロースティックスリップ同様に、マントルウェッジに存在する蛇紋岩勇断帯中の局所的な脱水によって不均一な構造が作られることによって引き起こされると考えられる。蛇紋岩は高垂直応力条件では非地震性の安定すべりをすることが知られているため、スロー地震は高間隙水圧により有効垂直応力が減少し、摩擦が支配的となったマントルウェッジの先端のみで起こっている可能性がある。このモデルは地震波観測から得られた結果だけでなくスロー地震発生シミュレーションの結果とも非常に調和的であり今回の実験結果よりスロー地震発生メカニズムを物質科学的な側面から議論することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、高温高間隙水圧条件下で蛇紋岩の変形実験を行い、沈み込み帯で起こっているスロー地震発生機構を物質科学的側面から解明することであったが、今年度のみで研究の目的をほぼ達成することができた。蛇紋石の剪断変形に伴う脱水によって実験室でスロー地震を再現していると考えられるスロースティックスリップが起こること、そしてスロースティックスリップのスケーリング則が実際のスロー地震のスケーリングと一致したことを発見したことでスロー地震発生機構をおおむね理解できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は研究課題であるスロー地震の発生メカニズム解明のために、蛇紋岩や沈み込み帯に存在すると考えられる他の岩石、特に付加帯物質である泥岩と海洋地殻の玄武岩の変形実験をスロー地震発生域に近いより高圧な条件で行うこと計画としている。今後取得予定であるよりスロー地震発生域に近い条件で行われた実験結果からスロー地震発生メカニズム解明へつながるさらなる基礎データを得られると期待される。
|
Research Products
(10 results)
-
-
-
-
-
[Presentation] TBD2012
Author(s)
Noda, H., K. Okazaki, I. Katayama
Organizer
Gordon Research Conference Rock Deformation
Place of Presentation
Andover, USA
Year and Date
20120820-20120824
-
-
-
-
-