2013 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込みプレート境界のレオロジー:東北地方太平洋沖地震の発生機構の解明に向けて
Project/Area Number |
12J07181
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
澤井 みち代 広島大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 東北地方太平洋沖地震 / 藍閃石片岩 / 有効応力 / 高温・高圧実験 / IODP Exedition 343 / 摩擦挙動 |
Research Abstract |
東北沖プレート境界域の地質から予想される岩石を使って低温~高温, 高圧条件下で摩擦実験をおこない, 東北日本における沈み込みプレート境界の摩擦の性質を決める目的で以下の研究を実施した. 1. これまで沈み込み帯で重要な構成物質を用いた高温含水条件下での摩擦実験は, ほとんど行われていない. 加えて, 従来の沈み込み帯の地震発生モデル(e.g., Scholz, 1998)は, 水圧を様々に変化させたときの速度依存性の変化は考慮されていない. そこで本研究では, 東北沈み込み帯の地震発生域に存在すると考えられる藍閃石片岩を用いて, 震源環境条件を含む低温~高温, 高圧条件下における摩擦の性質を調べ, 断層の力学の立場から東北地方太平洋沖地震はじまりのメカニズムを検討することを試みた. 実験には, ユトレヒト大学設置の回転式勇断試験機を使用し, 特に摩擦の速度依存性を示すパラメータ(a-b)が, 温度と有効応力の上昇に伴ってどのように変化するかを調べた. その結果, 室温条件下で正の値を示した(a-b)は温度の上昇とともに負の値を取る傾向を示し, 200℃を境に再度増加する傾向へ転じることが明らかとなった. また, 低有効応力下では負の値をとったa-bが, 有効応力の上昇とともに正の値に変化する傾向も確認された. これらは, 藍閃石片岩が100-300℃の深さ範囲もしくは低有効応力下において, 地震を引き起こす性質を持つことを示唆するものであり, 東北地方太平洋沖地震の震源域温度が約160℃程度と推測されていることからも, 震源核形成の要因となりうるのではないかと考えられる. 2. 2011年地震直後の日本海溝での掘削(JFAST)にて強く勇断された堆積物の存在が報告されている. 世界で唯一高温高圧条件下で大きな歪を与えることのできるユトレヒト大学設置の回転式勢断試験機は, 航海にて採取された堆積物の摩擦性質を調べるのに最も適した試験機である. まだ予察的研究段階であるが, 低温側で地震性の性質をもつことを示唆する結果が出ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究結果を論文にまとめ, 現在国際誌に投稿・査読中である. また当初の予定通り6月より1年間オランダのユトレヒト大学にて摩擦実験・及び物質解析を進めており, 現在までに, 東北沈み込み帯の地震発生域に存在すると考えられる藍閃石片岩の摩擦特性を明らかにし, 地震を引き起こす可能性について議論をしている. 成果は今後国際学会等にて発表予定であり, 現在は国際誌掲載に向けて論文を執筆中である. 同じく予定していたJFASTでの航海で採取された東日本に沈み込んだ堆積物での実験にも既に取り組み始めている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究を推進すべく, 6月までは引き続きユトレヒト大学にて東北地方太平洋沖地震後の昨年4-5月におこなわれたJFASTでの航海で採取された堆積物を用いた実験・及び物質解析に取り組む予定である. 帰国後, 広島大学・高知コアセンター両機関の機器分析装置を駆使し, 本年度までにおこなってきた実験の回収試料の微細組織観察に重点を置き研究を進めていく. これらにより, 東北沈み込む帯を構成する物質の力学的・化学的性質を深部から浅部にわたって明らかにし, 連動型巨大地震のモデリングに必要なデータとして海溝型巨大地震の発生機構の理解へとつなげる.
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Research Products
(4 results)