2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07214
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長坂 浩太 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分裂期 / 姉妹染色分体 / 前期 / 染色体分離 / 染色体凝縮 / Condensin II / Topoisomerase IIα / Cohesin |
Research Abstract |
本研究では、分裂期染色体形成過程における姉妹染色分体分離の分子背景を明らかにすべく、その一端を担うコヒーシン解離の分子メカニズムの解明を追求している。本年度は、分裂期特異的なリン酸化修飾によりコヒーシンを解離する機能が亢進される可能性について検討した。その結果、コヒーシンの解離は、特定のリン酸化修飾のみによって引き起こされるものではないということが明らかになった。また、近年の研究から、コヒーシンの解離は様々な因子により複合的に制御されていることが示唆され、現在の研究手法ではその詳細なメカニズムの解明に取り組むのは困難であることがわかった。そこで、別の切り口から姉妹染色分体分離のメカニズムを解明すべく、姉妹染色分体の分離を定量的に解析する実験系の構築を目指した。これまでに、EdUとBrdUを用いて姉妹染色分体をそれぞれ別々の蛍光色素で染め分け、三次元画像解析ソフトによる解析で姉妹染色分体の分離の程度を数値化することに成功した。この実験系により、姉妹染色分体は前期から中期にかけて序々に分離されるという従来の見解とは異なり、実際には前期の間にその大部分の分離が完了するということが明らかとなった。また、分裂期前期から見られる姉妹染色分体の分離には、Topoisomerase IIα(Topo IIα)とCondensin IIの独立した2つの機能が必要であることと、2つの因子の間に分裂期特異的な相互作用を見出した。これらの結果は、Topo IIαとCondensin IIが直接的な相互作用を介して分裂期前期における染色体の凝縮と分離の過程を協調的に制御していることを示唆している。この成果は、未だに多くが謎に包まれている生命がいかにして遺伝情報を正確に子孫に伝達可能にしているのかを紐解くための大きな一歩と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、自身の研究結果と近年の報告から、成果としてまとめあげるのは困難であるということがわかった。しかし、姉妹染色分体の分離を定量化する実験系の確立に成功し、予期せぬ興味深い結果を得ることができた。今後の更なる研究の発展によって当初の期待以上の成果を得ることができると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
姉妹染色分体分離メカニズムの解明を目的としたコヒーシンに着目した当初の研究計画を変更し、今後は新しく確立した姉媒染色分体の分離を可視化する実験系を用いることで目的の達成を目指す。まずは、姉妹染色分体の分離を定量的に解析するために、三次元画像解析ソフトを用いて十分量のサンプルから客観的データを抽出するための解析手法の確立を目指す。現時点で、データの精度を向上する必要はあるものの、その解析手法の枠組みを完成するに至っている。また、Alexander Schleiffer博士との共同研究によるタンパク質立体構造予測に基づき、2つの因子の相互作用に必要な領域を同定する。最終的には、細胞内で姉妹染色分体分離におけるその相互作用の意義を検討することで目的を達成したいと考える。
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