Research Abstract |
本研究は,植物プロテアソームによるピストン修飾機構の解明を通し,植物の新規環境応答機構の解明を目指すものである。近年,植物は環境ストレスに対し,ピストン修飾によるクロマチン構造変換によって遺伝子発現を変化させ,適応していることが明らかになってきた。一方,プロテアソームは,能動的タンパク質分解によって様々な生命現象を制御するタンパク質複合体である。これまでの申請者の研究から,シロイヌナズナ19Sプロテアソームが,エピジェネティックな遺伝子発現制御に関与することが明らかになった。本研究では,植物プロテアソームによるエピジェネティック制御の分子メカニズムの解明を目的として研究を実施する。 当該年度は植物19Sプロテアソームによるピストン修飾制御機構を明らかとするために,逆遺伝学的解析および生化学的解析を実施した。これまでに19SプロテアソームがDNAメチル化を制御することを明らかにしているが,DNAメチル化はH3K4トリメチル化と拮抗的に働くことが示唆されている。さらに,酵母や動物において,プロテアソームがピストン修飾制御に関与する可能性が示唆されている。しかし,その詳しいメカニズムはわかっていない。本研究では,プロテアソームによるピストン修飾制御機構を明らかとするために,プロテアソームサブユニットRPT2aの相互作用因子を探索した。その結果,メチル化CpG結合タンパク質MBD1を同定した。MBD1の機能を明らかとするために,生化学的な解析を行った結果,MBD1はピストンへの結合能をもつことを明らかにした。さらに,逆遺伝学的解析を行ったところ,MBD1欠損変異体は,RPT2a欠損変異体同様に,糖ストレスに対して高感受性となることが示された。これらの結果から,プロテアソームがMBD1を介して,ピストン修飾制御に機能し,糖応答時の遺伝子発現制御に関与する可能性が予測できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,植物プロテアソームによるピストン修飾制御機構を明らかとするために,rpt2a変異体およびmbd1変異体を用いたマイクロアレイ解析を行い,プロテアソームによって遺伝子発現制御を受ける遺伝子の同定を試みる。また標的遺伝子を同定後は,その遺伝子のピストン修飾状態について検討を行う。 さらに,MBD1の機能を解析するために,ノックアウト変異体のみならず,過剰発現変異体を作製し,遺伝学的,生化学的解析を試みる。
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