2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物の低温馴化過程におけるGPIアンカータンパク質の機能と凍結耐性との関連
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12J07373
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 岩手大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | GPIアンカー型タンパク質 / ショットガンプロテオミクス / 低温馴化 / 細胞膜 / マイクロドメイン / 凍結耐性 / アポプラスト / 植物 |
Research Abstract |
低温馴化過程では、細胞膜のたんぱく質や脂質の組成変化が凍結耐性の上昇に重要な意味を持つことが示されており、その中でも細胞膜貫通型および表在型たんぱく質の変動は多数報告されているが、脂質修飾型タンパク質に関しては存在量が少ないため、知見がほとんどない。そこで、昨年度に立ち上げたGPIAP濃縮プロトコールの抽出フローを発展させ、より大規模なGPIAPの同定を実現した。また、GPIAPが存在すると考えられている細胞膜表面の中の微小領域(マイクロドメイン)やアポプラスト画分も抽出してショットガンプロテオーム解析を行うことにより、より広範囲なGPIAPの同定と定量を実現し、163種類のGPIAPの同定に成功した。細胞膜、マイクロドメイン、アポプラストではそれぞれ様々な機能を持つGPIAPが存在することを示し、低温馴化過程における変動パターンも異なっていた。このことから、GPIAPは未知の制御機構によって、低温馴化過程におけるそれぞれのGPIAPの局在性や各部位でのGPIAPの蓄積量の変化を制御させている可能性が示された。また、昨年度から着目していた低温馴化誘導性GPIAPのAt3g04010に関しては、遺伝子発現が減少したノックダウン変異体を作出し、凍結融解後の再生長量を見ることで凍結耐性を評価した。その結果、野生型に比べ凍結融解後の再生長量が有意に低下しており、At3g04010の重要性が示された。さらに、低温馴化過程におけるAt3g04010の詳細な遺伝子発現パターンをqRT-PCRで測定したところ、低温馴化12時間後に発現のピークが見られた。GUSプロモーターアッセイにより器官特異的発現も解析したところ、根や葉柄などの、物質輸送に関するような器官で発現が見られ、特に維管束に発現が集中していた。このことから、At3g04010が維管束組織において低温により誘導され、凍結耐性上昇に寄与していることが示唆された。また、本年度はAt3g04010の蛍光たんぱく質mCherry融合変異体の作出も進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPIAPのプロテオーム解析に関しては、昨年度からさらに検出数を増やすことができ、低温馴化過程におけるより網羅的な変動を解析することができた。また、GPIAPが存在すると考えられる細胞膜画分やアポプラスト画分などにおいて、それぞれ特徴的な変動を検出することができ、低温馴化メカニズムにおけるさまざまな生理学的意義に結び付けられうるデータを示すことができた。また、同定されたGPIAPの一つ、At3gO4010に関しては、低温馴化過程におけるより詳細な遺伝子変化パターンを示し、器官特異的発現も表すことができた。また、蛍光たんぱく質によるAt3g04010のラベリングも本年度に進行させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. GPIAPのプロテオーム解析に関してはデータが一通りそろったため、学術雑誌に論文として投稿する準備を進める。 2. これまでのプロテオーム解析および生理学的解析から、凍結耐性の上昇に寄与しているとみられる候補遺伝子(At3g04010)に関しては、蛍光たんぱく質mCherryを融合させたAt3g04010変異体を作成し、細胞内局在を明らかにして低温馴化過程における機能を明らかする。また、アミノ酸配列を元にした機能予測結果から、At3g04010が細胞壁成分であるカロースの分解に関わっている可能性があるため、組織中のカロースを染色して低温馴化とAt3g04010の関連性を探る。
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Research Products
(8 results)