2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポリイミドの電子構造・凝集状態と光学特性の相関解析および光機能材料への応用
Project/Area Number |
12J07535
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
滝沢 和宏 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ポリイミド / 超高圧 / 蛍光 / 光電流 / 電気伝導 / 凝集状態 / 電子状態 / 電荷移動相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、ポリイミド(PI)の電子状態や分子鎖の凝集状態が、その光吸収・蛍光・光電導性(光照射により電気が流れやすくなる特性)などの光・電気物性に及ぼす影響を明らかにし、高耐熱性光学材料の新たな分子設計指針を得ることを目的として実験を行った。第一に、"高蛍光性含フッ素PI"に8万気圧までの超高圧を印加し、分子鎖間距離を短縮した場合の蛍光特性変化を観測することで、PIの凝集状態と蛍光特性の相関を調査したところ、加圧初期過程の1万気圧までの圧力域において蛍光強度が顕著に減少した。超高圧下で行ったX線回折との比較から、これは加圧初期過程において自由体積の減少を伴う顕著な分子鎖間距離の減少が生じたためと考えられる。以上の実験から、PIの蛍光強度と分子鎖の凝集状態には直接的な相関があり、分子鎖間距離が減少することで蛍光強度が顕著に減少することが明らかとなった。このことから、PIの蛍光特性を向上させるためには、嵩高い置換基や屈曲構造を導入することで分子鎖の凝集を阻害することが有効であるとの知見を得た。 第二に、異なる分子構造を有する6種のPIの電気伝導性(暗電流)の温度依存性の測定を通して、PIの分子構造と電導機構の相関を考察した。この系では測定系の立ち上げから検討を開始した。暗電流の高温領域での電流密度の傾きとCyclic Voltammetry測定から求めたPIのHOMO-LUMOエネルギーギャップとの比較から、主鎖にトリフェニルアミン構造を有するPIが高温領域において内部電荷を起源とする電導機構を有すること、一方、他の全芳香族・半芳香族PIではイオン性伝導などに起因する電気伝導が生じていることを明らかにした。これらの結果から、電気伝導特性が低いことで知られるPIにおいても、ホール輸送性の高いトリフェニルアミン骨格を導入するなど、その分子構造を変化させることで電子性伝導機構を導入できることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に予定していた超高圧実験および暗電流の温度依存性は計画通りに実施し、新たな知見を得ることができた。一方、電気伝導特性と光電導特性の評価装置の立ち上げには予想以上の時間がかかったが、測定系の構築はほぼ終わり、系統的な実験データが得られ始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度、開発した光電流の光照射波長依存性(光電流スペクトル)の測定装置を利用して分子内・分子間電荷移動(CT)相互作用の大きさを系統的に変化させた全芳香族・半芳香族PI薄膜の光電導性を評価するとともに、量子化学計算や光吸収・蛍光スペクトルとの比較を行うことで、PIのCT性がその光電導性に与える影響を検討する予定である。さらに、上記検討で得られた知見を基盤として、別の有機物をドープすることなく高い光電導性を示す新規の耐熱性光・電子機能高分子の分子設計・開発を目指した検討を行う。
|
Research Products
(4 results)