2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物・昆虫に寄生する細胞内パラサイトの環境適応戦略
Project/Area Number |
12J07546
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 千裕 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ファイトプラズマ / 環境応答 / トランスクリプトーム / SODスーパーオキシドジスムターゼ(SOD) |
Research Abstract |
細胞寄生性細菌であるファイトプラズマは、そのライフサイクルにおいて植物および昆虫を宿主とする。そのためそれぞれの宿主細胞内の全く異なる環境に適応するシステムを備えていると考えられる。そこで、宿主のスイッチングに伴い変動する遺伝子を網羅的に解析するため、感染初期におけるファイトプラズマ遺伝子のトランスクリプトーム解析を行い、その結果をもとに転写因子や膜タンパク質など感染に重要であると考えられる遺伝子を選定した。中でもH24年度は活性酸素種分解酵素(SOD)に着目し解析を進めた。 一般に動植物は、細菌感染への防御応答として強い細胞毒性を持つ活性酸素種を放出する。そのためファイトプラズマはSODを発現させることで防御応答による活性酸素種を回避し、両宿主への感染を成立させているのではないかと考え、以下のような実験を行った。 始めに、ウエスタンブロッティングおよびリアルタイムPCRにより植物および昆虫感染時におけるSODの発現量の比較を行った。その結果ファイトプラズマはSODを植物および昆虫感染時いずれにおいても同程度発現させていることが明らかとなった。次にin vitroにおける酵素活性試験により、ファイトプラズマのSODがマンガンイオン配位型のMn-SODとして機能することを明らかにした。 ファイトプラズマが属するモリキューテス綱の細菌は、退行的進化を遂げた結果多くの遺伝子を失ったと考えられており、ファイトプラズマ以外のモリキューテス綱細菌はsod遺伝子を有していない。従って、ファイトプラズマがsod遺伝子を保持し続けているということは、SODがファイトプラズマの生存にとって重要な役割を果たしている可能性を示している。本研究の結果、SODは植物および昆虫感染時のいずれにおいても発現していることが明らかとなり、両宿主への感染成立にSODの機能が必要であることを示唆する大変興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、形質転換系を利用した研究手法を応用することができない難培養性細菌「ファイトプラズマ」の遺伝子発現機構を、ポストゲノミクス解析手法を駆使することにより明らかにすることを目的としている。初年度である平成24年度は、宿主のスイッチングに伴いファイトプラズマの遺伝子発現がそれぞれの宿主細胞内でどのように変化しているのかを網羅的に解析することに成功し、感染に重要であると考えられる遺伝子を選定することができた。このことから、当初の計画どおり今後は具体的な遺伝子に焦点を当て解析を進めることができると考え、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析により得られた情報をもとに選定した遺伝子の中でも特に、遺伝子発現制御の要となる2種類の転写因子に着目し、解析を進める。具体的にはリアルタイムPCRおよびウエスタンブロッティングによる転写因子の発現量比較、in vitro転写系を用いた遺伝子プロモーター配列の特定、転写因子の発現量を制御するシグナル因子の特定を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Functional characterization and gene expression profiling of superoxidedismutase from plant pathogenic phytoplasma2012
Author(s)
Miura C. , Sugawara K., Neriya Y., Minato N. , Keima T. , Himeno M., Maejima K., Komatsu K. , Yamaji Y., Oshima K. , Namba S.
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Journal Title
Gene
Volume: 510
Pages: 107-112
DOI
Peer Reviewed
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