2012 Fiscal Year Annual Research Report
19-20世紀転換期ラテンアメリカ文学におけるヨーロッパ芸術思潮の受容と展開
Project/Area Number |
12J07556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棚瀬 あずさ 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文学 / スペイン語 / モデルニスモ / ルベン・ダリオ / ラテンアメリカ / 多国籍 / 象徴主義 |
Research Abstract |
本研究は、19-20世紀転換期ラテンアメリカ文学におけるヨーロッパ芸術思潮の「受容」(どのように紹介され、受け入れられたか)と「展開」(受け入れられたものが文学作品にどのように取り込まれ、活かされたか)の状況を明らかにする作業を通じて、この時期のラテンアメリカの文学作品が持つ独自性を、当該地域の枠内で考察するに留まらず、ヨーロッパ芸術思潮との関係からも明確に把握し、国や言語を越えて展開する世紀転換期の芸術動向におけるラテンアメリカ文学の位置づけを明らかにしようとするものである。 平成24年度は、20世紀初頭以前のスペイン語圏の文芸雑誌や、比較対象となる19世紀から20世紀初頭のヨーロッパの文学作品や定期刊行物等の収集・分析を行う「受容」研究と、当該時期のラテンアメリカの文学作品を幅広く収集し精読する「展開」研究を並行して行った。研究対象としては、当時のラテンアメリカの文学運動モデルニスモの領袖であり、ヨーロッパの最新文芸を積極的にスペイン語圏に紹介した詩人ルベン・ダリオをはじめ、ホセ・マルティ、レオポルド・ルゴーネスといった作家の著作と活動に着目して作業を進めた。日本国内での入手が難しい資料も多いため、スペインとフランスにおける学術調査を実施して資料を収集した。フランス国立図書館では、ダリオが編集長を務めた文芸雑誌『ムンディアル』全号をデジタルカメラで複写する許可を得て、当時のスペイン語圏における文学状況を知るにあたり極めて貴重な資料を得ることができた。 研究成果の一部については、既に日本イスパニヤ学会機関誌『HISPANICA』第56号及び東京大学現代文芸論研究室論集『れにくさ』第4号に論文を発表し、また、日本ラテンアメリカ学会の第33回定期大会における口頭発表を行った。未発表事項については平成25年度中に論文にまとめ発表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画に沿って作業が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後研究を進める上では、当該時期のいっそう幅広い文学作品を研究対象とすることによって、これまでの成果についてより多様な視点から考察することが可能になるであろう。 また、とりわけ文芸雑誌等の定期刊行物を対象とする「受容」研究については、まだ収集が不十分であり、また、日本国内から資料にアクセスするのが難しいことから、在外学術調査を行うことが研究推進に資すると考えられる。
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Research Products
(3 results)