2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 光紀 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルコフ基底 / 副表和モデル / コミュニティ構造 / Birkhoffモデル |
Research Abstract |
初年度の研究では、実用上自然であり、かつ対応するトーリックイデアルの構造が比較的簡明であることが期待される統計モデルに対して、そのマルコフ基底の構造解明を行う予定であった。具体的には、(1)二元分割表の独立モデルに複数の副表の効果を加味したモデル、(2)コミュニティ構造を加味したランダムグラフモデル、の二種類を候補として挙げていた。まず、(1)については変化点に対応する効果を含めたモデルと、対角ブロックの効果を加味したモデルに対し、マルコフ基底の具体形の導出に成功しており、この結果は既に論文誌に掲載されている。(2)については、ランダムグラフの基本的モデルである、ベータモデル、Bradley-Terryモデルに対して、各コミュニティの影響を表すパラメータを導入したモデルを考え、対応するグレイバー基底の適切な部分集合について考察を行った。特に、コミュニティ数が2である場合については、適切な極小部分集合の具体形を導出した。この結果については、研究集会での発表を行った。コミュニティ数が2である状況は、男女の別、左利きと右利き、文系と理系など、現実世界でしばしば現れる。今後、具体的な実データ解析を行ったうえで、論文を執筆予定である。初年度では新たな研究対象として、統計的ランキングモデルに付随するトーリックイデアルの研究にも着手した。具体的には、山口天氏との共同研究により、Birkhoffモデルと呼ばれるモデルに関するDiaconisとErikssonによる予想を、より一般的な枠組みにおいて肯定的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、比較的簡明な統計モデルに対するマルコフ基底に関していくつかの結果が得られた。二元分割表の統計モデルでは、変化点モデルとブロック対角モデルに対してマルコフ基底の具体形の導出に成功しており、論文誌にも掲載されている。コミュニティ構造を加味したランダムグラフモデルでは、コミュニティ数2の場合に限り具体形の導出に成功した。しかし、コミュニティ数3以上の場合には具体形の導出が困難であると思われる。一方、新たな研究課題として、統計的ランキングモデルに関する結果も得られている。以上を踏まえ、当初の計画の一部に課題が残っているものの、新たな課題についても進展が得られたため、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度では、初年度の結果を足掛かりとし、高次元分割表の統計モデルに対するマルコフ基底の構造解明や、新たにホロノミック勾配法に関する研究を行う予定であった。初年度新たに着手した統計的ランキングモデルに付随するトーリックイデアルについては、グループ選択モデルへの拡張や証明手法の他の統計モデルへの適用など、さらに結果を得られる可能性がある。そこで、第2年度には、当初から予定していた研究課題と並行して、統計的ランキングモデルに対しても継続的に研究を進めていく予定である。ホロノミック勾配法については、応用上重要である分割表モデルの条件付き最尤法への応用を第一の課題として取り組む予定である。
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Research Products
(8 results)