2012 Fiscal Year Annual Research Report
アルカリ/尿素系溶液を用いて調製した再生セルロース複合化フィルムの物性解析
Project/Area Number |
12J07663
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楊 全嶺 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 再生セルロースフィルム / アルカリ/尿素 / 酸素バリア性 / 疎水性 |
Research Abstract |
セルロースのアルカリ(NaOH/LiOH)/尿素水溶液(AUC溶液)から調製された再生セルロースフィルムは透明かつフレキシブルであり、セロハン、PVC(ポリビニリデンクロライド)、PVA(ポリビニルアルコール)などの汎用素材よりも優れた酸素バリア性を示す。この性質はフィルムの調製条件に大きく依存する。AUCフィルムの酸素透過性はその密度に反比例し、低温条件下で高濃度のAUC溶液から調製されるフィルムは低い酸素透過性を示す。 圧縮前処理に続き、圧縮を加えながら真空乾燥により調製されたフィルムの引張強度、弾性率、熱膨張係数、及び酸素透過率はそれぞれ263Mpa、7.3GPa、10-3ppmK-1、0.0007ml μm m^<-1>day^<-1>kPa^<-1>に達し、いずれもこれまでに報告された無配向の再生セルロースフィルムの中において、最も優れた値である。したがって、AUC溶液システムは環境にやさしい、新しい高機能性セルロースフィルムを生み出す可能性を秘めている。 AUCフィルムをカチオン性のAKD(アルキルケテンダイマー)分散液に浸漬し、乾燥、加熱により表面改質を行った。AUCフィルムの表面を高々0.2%の疎水性のAKDで覆うことによって、AUCフィルムの水接触角は50。から110。まで上昇し、水中に6日間浸漬した後の吸水量は92%から20%に低下し、絶乾状態における酸素透過率は装置の測定限界を下回り、相対湿度50%、75%における酸素透過率はそれぞれ0.56、5.8ml μm m^<-1>day^<-1>kPa^<-1>から0.13、2.1ml μmm^<-1>day^<-1>kPa^<-1>まで低下した。また、AKD処理したAUCフィルムは高い光透過率(600nmにおいて88%)、引張強度(168MPa)、破断伸び率(29%)、破断仕事(37MJm-3)を示した。 AUCとMTM(モンモリロナイト)の複合化により、ナノ多層構造を有する透明でフレキシブルなフィルムを調製した。複合フィルムはオリジナルのAUCフィルムよりも高い機械強度、酸素バリア性、熱安定性を示した。セルロース85%、MTM15%配合の場合、フィルムの引張強度と弾性率はAUCフィルムの1.61と1.80倍まで向上し、逆に熱膨張率と相対湿度50-75%における酸素透過率はそれぞれAUCフィルムの60%と42_33%に抑えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に従ってAUCフィルムの酸素バリア性を評価した。絶乾状態において、AUCフィルムはセロハン、PVC、PVAなどの汎用素材よりも優れた酸素バリア性を示した。しかし、セルロースが親水性であるため、相対湿度が上昇するにつれ酸素透過性も上昇した。そこで、疎水性のAKDによる表面改質、及びMTMとの複合化を試み、それぞれのフィルムに対し特性解析を行った。その結果、高湿度条件下でのガス透過率は抑えられ、複合化により機械強度は著しく向上した。
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Strategy for Future Research Activity |
AUCと市販の合成ナノクレイであるSPN(サポナイト)との複合化を行い、透明性を損なうことなく、高強度、高ガスバリア性を有するナノコンポジットフィルムを調製する。SPNをナノフィラーとして用いたクレイ/ポリマーのナノコンポジットはこれまでに幾つか報告されており、クレイのサイズが小さいため天然のMTMのコンポジットより透明性に優れている。AUC/SPNの複合フィルムに対し、結晶性、配向性を評価し、機械強度、熱膨張率、ガスバリア性を測定し、AUC/MTM複合フィルムとの比較を行う。 AKDによるセルロースの疎水化のメカニズムを究明する。そのため、AKDで表面改質されたAUCフィルムに対し、クロロホルム、熱湯、ジオキサン水溶液により段階的にAKDやその関連物質の抽出を行う。処理後のフィルムのAKD含有量や水接触角を測定し、AKDがセルロースの疎水化においてどのような働きをするか解明する。
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Research Products
(7 results)