2013 Fiscal Year Annual Research Report
ファイトプラズマの防除に向けた昆虫媒介のインターフェースとして働く脂質ラフト解析
Project/Area Number |
12J07695
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
煉谷 裕太朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ファイトプラズマ |
Research Abstract |
ファイトプラズマは植物に感染して甚大な被害をもたらす植物病原最近であり、感染植物を吸汁した昆虫の体内で増殖した後、新たに吸汁した健全植物に伝染するため、防除は極めて困難である。 本研究は、ファイトプラズマの防除に向けた昆虫媒介に関わる因子の探索を目的として解析を行う。細胞内寄生の細菌は、宿主の細胞に侵入するため細胞表面に結合する必要がある。ファイトプラズマと近縁な細菌であるマイコプラズマやスピロプラズマでは、宿主細胞に結合する接着因子が宿主への感染に必要であることが知られている。OYファイトプラズマのゲノム解読の結果、マイコプラズマやスピロプラズマで接着因子として知られているタンパク質と相同な領域を持つタンパク質をコードする遺伝子を見出し、解析を行った。 発見した遺伝子から翻訳されるタンパク質は、推定されるアミノ酸配列から膜タンパク質であると考えられ、菌体表面に露出していると予想された。またゲノム解読を行ったOYファイトプラズマ以外の複数のファイトプラズマ系統でもこの遺伝子が高度に保存されていた。さらに、このタンパク質に対する抗体を作成してファイトプラズマ感染植物および感染昆虫でタンパク質の検出をしたところ、両感染宿主の粗抽出液で単一のバンドが得られた。そのため、ファイトプラズマは感染宿主内でこのタンパク質を発現していることが分かった。今後は、このタンパク質が宿主との結合に関与することを確かめるとともに、このタンパク質がOY-NIM系統の昆虫媒介能の喪失に関与しているのかを検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接着因子は宿主への感染の際に重要な働きをしていると考えられ、ファイトプラズマにおいて接着因子とされる遺伝子は見つかっていない。ファイトプラズマのゲノム情報を精査した結果、マイコプラズマやスピロプラズマの接着因子とアミノ酸配列の似た領域を持つホモログを発見した。ファイトプラズマにおける接着因子の候補を発見したことで、昆虫媒介におけるメカニズムの解明に近づいたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
接着因子候補であるたんぱく質の、宿主への接着能を調べるとともに、昆虫伝搬能を喪失したファイトプラズマ糸統において、このタンパク質が関与しているかどうかを調べる予定である。
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