2013 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の老化におけるニッチ構成タンパク質SPARCの役割に関する研究
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12J07714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 克行 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 骨格筋 / 非構造性細胞外マトリクス / 老化 / SPARC |
Research Abstract |
1. SPARC内在化機構とその加齢性変化 加齢に伴い骨格筋内では脂肪蓄積が亢進し、このことが筋機能の低下を招く一因となっている。申請者は抗脂肪分化抑制作用を持つニッチ構成タンパク質SPARCに対する反応性が老齢ラット由来骨格筋前駆細胞において低下することを示した。この骨格筋前駆細胞におけるSPARCに対する反応性低下についてその機序を解明するため、Alexa蛍光色素によりSPARCを標識し、ラット骨格筋由来前駆細胞に添加したところ、SPARCが細胞内へと取り込まれることが判明した。siRNAを用いた実験から、SPARCがクラスリン依存性エンドサイトーシス経路により細胞内へと取り込まれた後、Rab7陽性エンドソームへと輸送され、このSPARC内在化が老齢ラット由来の細胞で充進していることを見い出した。クラスリンに対するsiRNAを用いSPARCの内在化を抑制した時のSPARCの作用を調べたところ、この内在化はSPARCの脂肪分化抑制作用を減弱する経路であることが明らかとなった。以上のことから、骨格筋前駆細胞においてSPARCの内在化が加齢に伴い変化することでSPARCに対する反応性が低下する可能性が考えられた。 2、CRISPR/Casシステムを遺伝子改変ラットの作製 これまでSPARCと筋萎縮および脂肪蓄積との関連性について検討を行ったが、骨格筋の加齢性変化としては、筋萎縮および脂肪蓄積以外にも骨格筋の線維化が広く知られている。線維化とSPARCとの関係については一部例外はあるものの、心臓および肝臓などにおいてSPARCが線維化を憎悪する因子として報告されている。そこで骨格筋で線維化が亢進するモデルを作成するため、CRISPRゲノム編集技術を用い、骨格筋で線維化をきたす病態モデルラットの作製を試みた。その結果、ターゲットとした遺伝子の発現を欠損したラットの作出に成功し、このラットの骨格筋内において線維化の亢進をみた。今後はこのラットを用いSPARCと筋線維化との関係を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SPARCが骨格筋前駆細胞内に取り込まれるという当初は想定していなかった昨年度の結果を、本年度の追加実験により論文として投稿することができ、このことは計画通りの結果であると考える。さらに本年度はCRISPRゲノム編集技術を用い、複数種類の遺伝子改変ラットの作出に成功しており、このことは当初の計画以上の内容であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCRISPR技術を用い、SPARCが骨格筋の病態においてどのような役割を持つのか検討する予定である。骨格筋の加齢性変化として広く認識される筋の萎縮や間質の線維化に着目し、SPARCがサルコペニア治療のターゲットとなり得るのか、その分子機構も含め明らかにしていきたい。SPARCは相補的な役割を持つとされるファミリー因子が複数存在するため、それらの因子がSPARCの作用にどのような影響を与えるのかについてもCRISPRにより複数の因子を標的とすることで解明できると考えている。
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Research Products
(5 results)