2012 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースヒドロゲルを基材とした三次元足場材料の調製
Project/Area Number |
12J07759
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 紀之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | セルロースゲル / 細胞培養足場材料 / 多孔構造 |
Research Abstract |
1)セルロース溶解機構における尿素の役割 セルロースゲルの前段階材料であるセルロース溶液調製に必要な、セルロースの溶解条件の最適化を、溶解度、溶液熱安定性、溶解過程のX線回折測定を組み合わせることで検討した。尿素はセルロースに直接的な相互作用を持たないが、アルカリに溶媒和したセルロースの安定性を高めることで、セルロース溶解能を向上させていることがわかった。 2)セルロースゲルの尿素過剰添加による大孔径化 尿素の過剰添加によってセルロースゲルが大孔径化し、添加する尿素の量によってその多孔構造は制御できるということがわかった。 3)アルカリ・尿素溶剤由来のセルロースゲルの構造異方性 アルカリ・尿素溶剤由来のセルロースゲルは、凝固浴に浸漬することでゲル化を行う。そのため、厚み方向での異方性の存在が示唆されていたが、偏光、走査型電子顕微鏡による測定により、その存在を実際に確認した。この異方性はゲルの固形分濃度のゆらぎに起因するものと考えられる。 4)新規セルロース溶剤の本課題への適用 3)で明らかになったように、アルカリ・尿素溶剤からのセルロースゲルは厚み方向に構造的な異方性を有する。そのため、均一で厚みのあるゲルの調製が困難であり、これは本課題達成の大きな障壁となることが予想された。 近年発見された臭化リチウム濃厚水溶液はセルロースを高温(120℃)で溶解し、室温で溶液はゲル化する。このゲル化は、冷却により均一に進行するため、構造的に均一な厚みのあるゲルを調製することが容易である。よって、このセルロース溶剤の本課題への適用を検討した。その結果、2)に見られたようなゲルの大孔径化がなされ、さらに過剰に添加する食塩に分級処理を施すことで、ゲルの孔径は均一となり、力学的強度も2)に比べ向上した。また、孔同士がつながった(連通孔)構造が確認された。こういった構造は細胞培養に非常に有効である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来使用する予定であったアルカリ・尿素溶剤の欠点が明らかになり、本研究遂行の大きな障壁となると予想されたが、新規セルロース溶剤を使用することでこの問題を解決した。新規溶剤を使用してのセルロースゲルの大孔径化に関する検討はほぼ終了し、2年目から細胞培養の実験を開始する予定である。これより、本研究は当初の計画通り、順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規溶剤から得られた大孔径セルロースを使用し、動物の軟骨細胞を使用した細胞培養実験を開始する。細胞の接着性、成長、分化を検討する。細胞の接着性が低い場合は、完全水系の化学反応によりゲル表面にコラーゲンを導入し、細胞接着性の向上を図る。
|
Research Products
(4 results)