2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07837
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 寛 早稲田大学, 国際教養学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 戦後沖縄史 / 日本復帰 / 屋良朝苗 / 琉球政府 / ナショナリズム / 復帰運動 / 核密約 / 本土並み |
Research Abstract |
本年度は論文および新聞や雑誌などの活字メディアに研究成果を発表した。 論文として「屋良朝苗の日本復帰運動の原点-1953年の全国行脚一」(『沖縄文化』112号)を掲載した。これは本研究で最も重要な研究対象である屋良朝苗(琉球政府行政主席、沖縄県知事)が有した復帰思想の原点を追究した論考である。屋良は公には沖縄が日本への帰属することは「民族的文化的歴史的に当然」であると訴えていた。しかし、日記に遺された内容から内面では沖縄民族意識を屋良は自覚していた。これは70年代まで続く日本政府との復帰に関する交渉内容に通底する特徴の一つといえる。 研究ノート「戦後沖縄政治史を掘り起こす-『屋良朝苗日誌』の可能性-」(『早稲田琉球・沖縄研究』第4号)は、本研究が重要視している資料『屋良朝苗日誌』の翻刻である。60年代後半から70年代にかけての日本政府高官との会談録に該当する部分など、特に研究対象として重視している個所を取り上げた。同時に戦後沖縄史研究の貴重資料であることを解説した。 また、博士学位申請論文「戦後沖縄の帰属論争と民族意識-日本復帰と反復帰」(早稲田大学社会科学研究科)を提出し、審査の結果、博士(学術)を受領した。日本復帰賛成派の屋良朝苗と日本復帰反対派の新川明(思想家)の言説を比較することにより、沖縄帰属論争とは国家と民族の関係性を巡る議論であったことを論証した。本年度中に収集した資料を活用し分析を加えたことは、本論文の完成に不可欠であった。 上記の研究発表のほか、沖縄の地元紙『沖縄タイムス』でエッセー欄「唐獅子」(半年間、全13回)を担当し、日本復帰についての研究動向や現在の米軍基地問題などをテーマに連載した。そのほか、有斐閣PR誌『書斎の窓』、中高の社会科教師向け雑誌『歴史地理教育』にて沖縄返還に関する研究の一端を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで研究成果を論文や雑誌記事などとして随時発表してきた。また、沖縄県公文書館での資料収集もおおむね予定通りのペースで進んでおり、分析も現在進めている。資料を精査後にさらなる調査が必要かどうかを判断するが、現状としては当初の計画に鑑みて順調だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は尖閣諸島領有権問題に関する琉球政府の対応についてまとめ、学会報告および論文として発表する予定である。特に琉球政府が領有宣言を行った1970年前後に焦点をあて、分析を進めていく。 その後は変動相場制移行に伴う通貨交換補償問題など、他の日本復帰に関する重要懸案についての考察に移る。 資料収集も沖縄県公文書館にて昨年度と同程度に、また必要に応じて外務省外交史料館などでも調査を行う。同時に、博士論文を書籍として出版する準備を同時に進める予定である。
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Research Products
(4 results)