2012 Fiscal Year Annual Research Report
網目構造形成に及ぼすゲル化反応速度の影響とその静的・動的力学特性の解明
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12J07980
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片島 拓弥 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子物理 / ハイドロゲル / レオロジー / Tetra-PEG gel / ひずみエネルギー密度関数 / 二軸延伸 / supercoil / 排除体積 |
Research Abstract |
これまでの研究において申請者はプレポリマー形状・ゲル化速度の調節によりループ構造に代表される網目の結合不均一性を制御できる可能性を発見した。本研究において申請者は、網目の結合不均一性がどのようなメカニズムで形成されるかを明らかにし、結合不均一性がゲルの物性にどのような影響を及ぼし、どのように評価され得るかを明らかにすることを目的とした。これらの研究を通して申請者は、網目構造の不均一性を制御することで物性を制御する指針を得ること、またゲルの網目構造の物理学の構築に貢献することを目的とした。 本年度は前述した目的を達成するに先立ち、不均一性の排除された均一な網目がどのような力学物性を持つのかを明らかにすることは重要なことである。申請者は本年度内に以下の事項について明らかにした。 (1)Tetra-PEG gelの二軸延伸試験を行うことで、不均一性を排除した理想的な高分子網目構造の弾性エネルギーの関数型を初めて明らかにした。 (2)また(1)の結果より既存の分子モデルは、Tetra-PEG gelの二軸延伸結果を記述出来ないことを明らかにした。 (3)イオン液体を溶媒に用いたTetra-PEGgelを用い、作製時及び測定時のポリマー体積分率を変化させることで、その弾性率は排除体積効果を考慮したモデルを用いることで記述できることを明らかにした。 (4)(3)で作製したTetra-PEGge1を用いることで、脱膨潤過程において網目鎖が極端に収縮した構造(supercoil構造)を取ることを明らかにし、さらにそのフラクタル次元と架橋点間分子量についての関係を明らかにした。 (1)はすでに学会誌に掲載されており、(3),(4)の事項についても学会において発表がなされ、種々の表彰を受けており、期待以上の研究の進展があったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Tetra-PEG gelの二軸延伸試験を行うことで、従来のゲルに不可避であった網目の不均一性を排除した理想網目構造の歪みエネルギー密度関数の現象論的推測に成功した。また、得られたパラメータとその物理的な意味について考察した。 本研究はすでに論文化されており、学会誌に掲載されており、研究活動は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲルの特徴的な性質のひとつとして膨潤が挙げられる。上記の研究の中で、溶媒一高分子間の相互作用(排除体積効果)がゲルの応力-歪関係に影響を及ぼす可能性が示唆された。よって今後の実験においては積極的に排除体積を制御することで、理想的な網目構造のひずみエネルギー密度関数にどのような影響を及ぼすのかを調査する。
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Research Products
(8 results)