2013 Fiscal Year Annual Research Report
網目構造形成に及ぼすゲル化反応速度の影響とその静的・動的力学特性の解明
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12J07980
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片島 拓弥 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子物理 / ハイドロゲル / レオロジー / Tetra-PEGゲル / 歪エネルギー密度関数 / 二軸延伸 / スーパーコイル / 排除体積 |
Research Abstract |
これまでの研究において申請者はプレポリマー形状・ゲル化速度の調節によりループ構造に代表される網目の結合不均一性を制御できる可能性を発見した。本研究において申請者は、網目の結合不均一性がどのようなメカニズムで形成されるかを明らかにし、結合不均一性がゲルの物性にどのような影響を及ぼし、どのように評価され得るかを明らかにすることを目的とした。これらの研究を通して申請者は、網目構造の不均一性を制御することで物性を制御する指針を得ること、またゲルの網目構造の物理学の構築に貢献することを目的とした。 本年度は前述した目的を達成するに先立ち、不均一性の排除された均一な網目がどのような力学物性を持つのかを明らかにすることは重要なことである。申請者は本年度内に以下の事項について明らかにした。 (1)イオン液体を溶媒に用いたTetra-PEG gelを用い、作製時及び測定時のポリマー体積分率を変化させることで、その弾性率は排除体積効果を考慮したモデルを用いることで記述できることを明らかにした。 (2)(1)で作製したTetra-PEG gelを用いることで、脱膨潤過程において網目鎖が極端に収縮した構造(supercoil構造)を取ることを明らかにし、さらにそのフラクタル次元と架橋点間分子量、最大延伸度に及ぼす影響を明らかにした。 (3)結合率を任意に制御したTetra-PEGゲルと、ゲル網目につながっていないゲスト高分子鎖を導入したTetra-PEGゲルを作製し、二軸延伸を行った。その結果、純ずり変形下における直交する二軸間の応力比はゲル網目につながっている高分子鎖の存在確率にのみ依存することがわかった。 (1)(2)は国内・国際学会で発表された他、学会誌に掲載された。(3)の事項についても学会において発表がなされ、期待以上の研究の進展があったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イオン液体を溶媒に用いることで、高濃度領域において結晶化してしまうTetra-PEGゲルの欠点を克服した。この実験により、これまでほぼ研究がなされてこなかったゲルのスーパーコイル網目鎖の実験的な研究を行い、その構造・形成メカニズムについて有意義な結果を得られた。また本研究の結果はすでに学会誌に掲載されており、研究活動が順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲルの物理化学的な研究において、ゲルの構造を任意に制御することは重要である。上記の研究の中で、結合率や高分子体積分率を任意に制御することで、ひずみエネルギー密度関数の分子論的な由来を明らかにした。今後の実験ではループ構造がゲルの大変形を含む力学特性や膨潤特性にどのような影響を及ぼすのかを調査する。
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Research Products
(10 results)