2012 Fiscal Year Annual Research Report
網目構造の精密な制御によるTetra-PEGゲルの低摩擦化と医用材料への応用
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12J07983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤木 友紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハイドロゲル / 高強度 / 引裂試験 / 弾性率 / 均一網目構造 |
Research Abstract |
申請者は本年度内に以下の事項について明らかにした。 (1)Tetra-PEGゲルの引裂試験を行った。引裂試験を行うことで、材料に亀裂があった場合にどれくらいのエネルギーを加えると破壊するかを表すパラメータである破壊エネルギーを見積もることができる。今回、Tetra-PEGゲルの破壊エネルギーを求めることに初めて成功した。また、Tetra-PEGゲルを用いた破壊エネルギーの評価には重要な意味がある。一つは、得られた物性値と理論と比較することで、ゲルの破壊エネルギーを記述するモデルの決定を行うことができる。もう一つは、理想的な網目を仮定した理論式をモデルに組み込んだ理論と物性値との比較を行うことで、Tetra_PEGゲルの網目構造内に絡み合いがあるかどうかの評価が可能になる。Tetra-PEGゲルの物性値は、理論値と良い一致を示した。この結果から、ゲルの破壊エネルギーを記述するモデルは、従来ゴムの破壊エネルギーを記述するモデル (Lake-Thoms model)で記述可能であることが初めて確認された。また、Tetra-PEGゲルの破壊エネルギーが、理想網目を仮定したLake-Thomas modelで記述できたことから、Tetra-PEGゲルの網目構造内に絡み合いがないことが明らかとなった。 (2)Tetra-PEGゲルの弾性率測定を行った。ゲルの弾性率は基礎的な物性であるにも関わらず、網目構造の不均一性のために、それを記述するモデルを決定することができなかった。今回、様々な分子量・濃度からなるTetra-PEGゲルを作製し、弾性率の算出を行った。その結果、濃度増加に伴いモデルが変化することが明らかになった。これは、過去多くの研究者が、弾性率を記述するモデルについて検討・議論してきたが達成できなかったことであり、今回初めてゲルの弾性率を記述するモデルの決定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Tetra-PEGゲルの表面特性を調査するためには、バルクとしてのゲルの物性を知ることが重要となる。しかしながら、ゲルは極めて複雑な構造をしているため、物性値を記述するモデルの特定や構造の評価が困難であった。今回、Tetra-PEGゲルの実験を通して、構造評価やモデルの特定に成功したことは高分子物理分野にとって極めて重要な内容である。また、得られた結果は既に論文化されていることから、当初の計画以上に研究が進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Tetra-PEGゲルのバルクとしての物性評価については、ほぼ終えることができた。今後は、表面の評価を中心に実験を進めていく予定である。具体的には、表面にダングリング鎖を付与する方法についての検討を行う。実験方法の確立後、ダングリング鎖の鎖長・濃度を変えて表面に付与し、また、その際にバルクとしての弾性率に影響がないことを確認した上で表面の評価を行っていく。
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Research Products
(8 results)