2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08104
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 淳 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 触媒反応ネットワーク / 分子の少数性 / 栄養律速 |
Research Abstract |
本研究では, 一般の化学反応系と生命現象の大きな違いとして, 遺伝情報などの重要な情報がどのような条件下で確率性の高い反応系の中で頑強に保持・伝達できるのかを数値シミュレーションにより探求する. 今年度は主に触媒増殖反応系において分子複製に必須な栄養・資源が枯渇しているような状況での振る舞いについて研究を進めた. これまで研究代表者が行った研究成果のひとつである、分子の少数性と混雑性に起因した分子の局在構造の形成過程の新奇性は、個々の分子レベルから局在した分子集団レベルへと一段階上の選択・進化の単位の形成の可能性を提示した点にある. 少数分子と接触できる微小空間の取り合い(混雑性)を、反応を進める"資源"を取り合う効果として一般化し、触媒反応増殖系の増殖速度が速いというだけでない新規な選択の方向性を探求できないか? という着想に至った. まず単純な2種相互触媒増殖系に対して複製反応を進めるために必要な資源を表す変数を導入したモデルを提案した. 一般に資源が減少することで反応レートが減少するが、確率的な化学反応において反応レートが減少するのに伴い揺らぎも減少してしまい、先行研究で指摘されてきた揺らぎの大きさと進化可能性の性質を失う. 本研究では資源を複数の細胞間で取り合う効果を導入した結果、資源が枯渇し平均的な複製レートが減少した状況下でも、細胞間の揺らぎの効果により進化可能性を保持することを確認した. その後、多種類の分子種がランダムに触媒・基質関係を構成しながら複製・増殖する触媒反応ネットワークを形成する細胞集団に適用し、資源が枯渇した状況下では細胞の多様性が転移的に増す振る舞いを見せることを発見した. この結果は複雑な機構を持ち合わせない化学反応系においても、資源が枯渇した状況下で再帰的な増殖を続けながら多様性を増す様子が普遍的に見られることを示唆する結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の遂行状況についてほぼ当初の計画通りに結果を得ており、学会発表・論文発表も順調に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、おおむね順調に進展しており、これまで通り研究を遂行することで問題点はないと考えている。
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