Research Abstract |
本年度は, 病原ウイルスHIV-1に着目し, HIV-1潜伏感染における自然免疫機構の制御ならびにp53の寄与を検討した. HIV-1は, TLR7/8およびCtype Lectin receptorにより認識されることが最近明らかにされ, さらにこれらPRRの活性化がHIV-1の転写・増幅を促進することが示されている(Meier A et al, Nat Immunol, 2009), しかし, このような抗HIV-1自然免疫機構が存在するにも関わらず, HIV-1の潜伏感染が成立する分子機構はこれまで全く明らかにされていない. そこで, HIV-1潜伏感染成立において, HIV-1転写活性化を誘導する抗HIV-1自然免疫応答が抑制されているのではないかという仮説を立て検討を行った. その結果, HIV-1潜伏感染によりTLRシグナル応答が顕著に抑制された. また, その分子機構として転写因子NF-κBの抑制因子IκB-αタンパク質がHIV-1潜伏感染により安定化されていることを発見した, さらに, IκB-αタンパク質安定化は, 宿主HIV-1抑制因子として以前報告されたMurr1のHIV-1伏, における発上により亀されることを発した(Ganesh L et al, Nature, 2003). 以上より, HIV-1潜伏感染においてMurr1発現誘導を介したIκB-αのタンパク質安定化により, 抗HIV-1自然免疫応答が抑制されることが明らかになった(Taura M et al, 投稿準備中). さらに, HIV-1抑制因子の発現量を網羅的に比較検討した結果, 癌抑制遺伝子p53の著明な標的遺伝子として知られるp21の発現量が, HIV-1潜伏感染に伴い上昇することを見いだしており, 現在, HIV-1潜伏感染によるp21発現誘導のHIV-1潜伏感染への寄与を検討中である. また本年度は, AIDS治療の最適化を目的に, 新たに研究課題を立ち上げ推進した. AIDS標準治療法cARTのkeydrugの1つであるHIV-1プロテアーゼ阻害剤(PI)は, 小胞体ストレスを誘導することにより副作用を引き起こすことが示唆されている, そこで本研究では、FDAにより認可されている9種のPIを用い小胞体ストレス誘導性の比較を行い, Loinavirは性種(ROS)子的に細胞内シグナル分子JNKを活性化することによって, 最も強力に小胞体ストレスおよび細胞障害を誘導することを明らかたした(Taura M et al, Free Radic Biol Med, 2013).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は, 本研究における病態解析系構築を目的に実施してきたHIV-1研究で顕著な成果が得られた. 具体的には, HIV-1潜伏感染におけるp53関連遺伝子の顕著な発現差が確認され, p53による抗ウイルス自然免疫制御を解析する上で, HIV-1潜伏感染系をモデル系として用いる生理的意義を見いだすことができた. しかし, その一方で, p53を主軸とした自然免疫制御機構の解明に遅延が生じたため, 現在のところやや遅れていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
最近, p53がMHC class1分子の発現を制御することが報告され(Wang Betal, Nat Commun, 2013), p53による免疫系制御の研究は世界的にも波及して来ている, しかし, ウイルス感染などの病態と関連した研究報告は少なく, 本研究で解明しようとするp53によるPRR発現および機能制御機構の生理的意義も明らかにできていない. したがって今後は, これまでの研究において病態モデルとして着目し構築してきたHIV-1感染に着目して, p53-PRR制御系の意義を追求していく. 特に, ヒト末梢血由来樹状細胞ならびにHIV-1を用いて, ヒト免疫に重点を置いた研究を展開し, p53-PRR制御系の詳細を明らかにする予定である.
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