2012 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合性錯体を利用した金属ナノワイヤーの構築と単分子伝導度測定
Project/Area Number |
12J08348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大須賀 孝史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己集合 / クラスター / 単分子伝導度 / 単結晶X線構造解析 |
Research Abstract |
複数の金属イオンを近接させると、両者の間に相互作用が働くため単独の場合では見られない性質の発現が期待される。 金属イオンを精密に配置するために複数の配位点を持つ有機配位子が種々設計され、金属イオンの一次元鎖や二次元シートが合成されてきた。しかし、金属イオンを三次元に集積する場合、立体的な制約からこれら配位子を用いた手法を適用することは困難であると考えられる。 我々は、箱形の自己集合性かご状錯体の内部で平面状Au(I)三核錯体を3分子積み上げることで、[3×3]型Au(1)イオンクラスターを合成した(J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 15553)。Au(I)イオンの集積数(3×3)と、三次元配列は一義構造をもつかご状錯体によって精密に制御される。本研究では、かご状錯体内に平面状Au(1)三核錯体とAg(I)イオンを積層することで、トリプルデッカー型Au3-Ag-Au3-Ag.Au3ヘテロイオンクラスターを構築した。今回、かご状錯体は金属イオンの集積数と三次元配列を精密に制御するだけでなく、従来は得られなかったサンドイッチ型のクラスター構造を安定化できることが明らかとなった。 トリプルデッカー型の積層構造は、空のかご状錯体存在下、Au(1)三核錯体とAg(I)イオンを混合するだけでは得られない。初めに、前駆体のかご状錯体を合成し、その後ゲスト分子の交換を行った。各種醐R測定の結果、Au(I)三核錯体3分子が2個のAg(1)イオンを挟み込んだAu3-Ag-Au3-Ag-Au3トリプルデッカー型イオンクラスターが得られたことを確認した。さらに単結晶X線構造解析によりAu(1)イオンとAg(1)イオンは近接しており(2.69-2.82Å)、Au(I).Ag(I)相互作用が観測された。この成果は学術論文としてまとめ、Angew. Chem. Int. Ed.誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初、Auナノワイヤーの電気伝導度測定を目的としていた。本年度は、Auナノワイヤーに加え、2種類の金属イオンから成るAuAgヘテロナノワイヤーの構築に成功した。これにより、様々なナノワイヤーの電気伝導度を測定し比較を行えるようになるため、電気伝導度特性を評価する際に幅広い知見が得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Auナノワイヤーと、今回構築したAuAgヘテロナノワイヤーの電気伝導度を測定する。STMの電極間に分子1個をトラップし、その伝導度を測定する手法が既に確立されており、芳香族分子が有限集積した系については伝導度特性が明らかになっている(Angew.Chem.Int.Ed.2011,50,5708)。今後はこの手法を用いて、Auナノワイヤーのワイヤーの長さに応じた伝導度特性を明らかにする。さらに、AuAgヘテロナノワイヤーの伝導度との比較を行う。
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Research Products
(5 results)