2012 Fiscal Year Annual Research Report
「すざく」とASTRO-H衛星で実現する中性子星の質量と半径の同時測定
Project/Area Number |
12J08363
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 壮希 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中性子星 / 降着 / X線 |
Research Abstract |
私はLMXBの暗いハード状態における降着流の幾何を調べるため、「すざく」によるAql X-1のデータ(2007年の7観測)を解析した。7つの観測(以後Obs.1-7と表記)のうち、Obs.1は典型的なソフト状態、Obs.2-4はハード状態で、後者では中性子星(NS)へ球対称に降着するという描像が得られている(櫻井ほか2012)。 Obs.2-4よりさらに低光度(<10^<35> erg/s)になったObs.5-7では、スペクトルは5keV付近が凹んだ形状に変化する。これらはコンプトンされた(NS表面からの)黒体放射で再現され、その放射半径Rbbは7±1km(Obs-5)、3±1km(Obs-6-7)と、Obs.2-4での値10±1kmから有意に小さくなっていた。このような低光度(〈10"35erg/s)では、NS磁気圏の発達により、降着がNSの磁極に絞られているためにRbbが小さくなっていると考えられる。これが正しければ、低光度でパルスが見られる可能性が高い。私はこの丙容も投稿論文にまとめてsubmit済みである。 上記ハード状態でのパルス探査のため、連星軌道補正ソフトを開発している。今年度はそのベータ版が完成したため、軌道パラメータが既知のHer X-1でテストを行った。軌道補正により、パルス振幅が補正前の約2倍(peak-to-peak)となり、得られた軌道パラメータも既知のものと無矛盾であった。以後はLMXBのミリ秒パルス探査を進めるとともに、探査アルゴリズムの高速化も図る方針である。 これらと並行し、次期X線衛星ASTRO-H搭載HXI/SGDのソフトウェアの検証を進めている。今年度はFPGAを用いた検出器シミュレータの開発と、それを用いてソフトの検証を行った。以後は全体の結合試験へと進む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予定通り軌道補正ソフトウェアの開発が進み、その較正も行うことができた。また、LMXBの低光度のハード状態における降着流を調べることで、パルス発見の可能性はより高まったと言える。ASTRO-H搭載のHXI/SGDのソフトウェアも、試験は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画通りに、LMXBの中で軌道周期のみが既知のものについて、軌道補正ソフトウェアを適用し、正しくパラメータが得られるかの検証を行う。ただし、LMXBではパルス周期がミリ秒と、HerX-1より3桁も小さくなるため、補正の精度を上げなければならない。精度を上げると必然的に計算時間が長くなってしまうため、以後は較正とともに、補正アルゴリズムの高速化も図っていく方針である。
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