2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン感受性TRPP3チャネルの新規味覚受容機構の解明
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12J08523
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
樋口 大河 富山大学, 大学院・医学薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | TRP / TRPP3 / 温度 / ゲーティング / 味覚 |
Research Abstract |
TRPP3チャネルは細胞外アルカリ化により閉状態から開状態へ、さらにはイオン不透過な不活性化状態へとキネティクス制御されることを明らかとしてきたが、ゲーティングに関わる分子基盤については不明であった。これまでに電位依存性チャネルの不活性化メカニズムとして細胞内N末端が関与するN-type不活性化と選択性フィルター周辺が関与するC-type不活性化が知られていることから、TRPP3の細胞内N末端切断変異体(Δ2-90:ΔN)と選択性フィルター周辺に存在するアミノ酸残基のアラニン変異体(NANR 531-534 AAAA:4A)を作製し、各変異体発現細胞のチャネル電流の性質をホールセルパッチクランプ法により検討した。その結果、ΔN変異体はWT-TRPP3と同様のpH感受性を示したが、4A変異体ではアルカリによるチャネルの不活性化が消失していた。したがって、TRPP3の細胞外アルカリによる不活性化メカニズムには選択性フィルター周辺の531-534番目のドメインが重要な役割を果たしており、C-type不活性化が分子基盤であることが示唆された。 また、TRPP3に対する様々な苦味物質の効果についてホールセルパッチクランプ法により検討した。その結果、ベルベリンとデナトニウムはTRPP3活性に影響しなかったが、キニーネとカフェインはTRPP3を活性化したことから、TRPP3は新規苦味受容体として機能している可能性が考えられた。 さらに、味覚調節因子である温度がTRPP3活性に影響するかについて検討した。チャネル電流は40℃への温度上昇により減少したが、その後の温度低下により顕著に増大した。したがって、TRPP3は温度上昇により不活性化(オープン待機状態)へと移行しており、熱刺激除去により不活性化から開状態へと急速に遷移することで瞬時にチャネル活性が亢進するというモデルが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではTRPP3チャネル機能に関する新規知見を得た。これら知見は、TRPP3のチャネルゲーティング機構が苦味受容と密接に関連する可能性を示唆しており、今後の研究における重要な手がかりとなると考えている。本年度は研究実施計画をおおむね遂行できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPP3チャネルがキニーネやカフェインにより活性化する結果を得たが、これら苦味物質の作用メカニズムは不明であることから、TRPP3チャネルへキニーネやカフェインを作用させたときの電位依存性、シングルチャネルコンダクタンス、チャネル開確率の変化を詳細に解析し、TRPP3チャネルに対するキニーネやカフェインの作用機構について検討する。また、アルカリによる不活性化が消失した変異体に各種苦味物質を作用させたときの電流応答を解析し、TRPP3を介した苦味ゲーティングとアルカリによる不活性化基盤との関連性について検討する。さらに、TRPP3の苦味応答がpHおよび温度により影響を受けるのかについて検討する。
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Research Products
(2 results)