2012 Fiscal Year Annual Research Report
感覚間相互作用に着目した硬軟感の知覚原理および提示技術に関する研究
Project/Area Number |
12J08552
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 文信 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 触感ディスプレイ / 硬軟感提示 / 触覚センサ / 触知覚 |
Research Abstract |
本研究は柔軟物体に触れた際に感じる触感である「硬軟感」を再現提示するシステムの開発を目的として定めている.従来の硬軟感提示装置では提示できる柔軟物が単純なもの(均一な物質で構成される半無限体)に限定されていたため,本研究では不均一で複雑な構造を有する柔軟物体(内部にしこりを有するヒト肌など)の再現を目指す.また,硬軟感(に起因する物理量)を計測可能な触覚センサを開発し,提示装置と統合することにより遠隔提示システムを開発することも研究目的としている.H24年度は主に提示手法・提示装置について研究を進めた. 使用者の指先の接触圧分布を変化させることができる装置の提案・試作を行った.これまでに開発してきた硬軟感提示装置は柔軟なシートを指先に巻きつけることで柔軟面を再現していたが,制御対象が巻きつけ量のみであったため均一な柔軟物体しか再現できなかった.複雑な構造を有する柔軟物を再現するため,シートの張力を制御できる機構を提案した. 提案装置を用いた実験の際,特定の条件で使用者が「しこり」を知覚する(しこり錯覚)現象を発見した.この錯覚現象を利用することで,提示装置上に意図的にしこり感を生成する手法を提案した.この手法によって,しこりを含む柔軟物体の再現が可能となった.また,張力の制御方法によって,装置使用者が知覚するしこりのサイズが変化できることを確認した. また,提示する際に装置のコントローラで用いる計算モデルについても新しいアプローチを試みた.これまでに用いられてきた計算モデルは,静的な接触状況のみに着目していた.しかし,実在する柔軟物は粘性を含むものが多くみられ,それらに対する指との接触は静的なモデルでは十分に表現できないと考えられる.そこで本研究では動的な接触モデルを提案した.提案モデルを実際に提示装置に実装し,粘性を含む柔軟物が表現できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の硬軟感提示装置では制御不可能であった,指先の接触圧分布を変化させることが可能な装置を開発した.本装置を用いた実験から新しい触錯覚現象を発見し,それを提示する際の計算モデルに利用する方法を提案・確認した.本研究の目的となる「接触圧分布の制御」とそれによる「より複雑な硬軟感(不均一な構造を有する柔軟物体など)」の再現提示の可能性を示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,開発してきた提示装置を定量的に評価できるシステムの検討を行う.具体的には提示装置上に生成される圧分布を測定できるセンサを開発し,提示装置が予想通りの圧分布を生成しているかを評価する.また,提示できる触感をより多様なものにするために装置自体の改良や新しい計算モデルの考案を行い,評価を行う. 提示装置の開発と並行して触覚センサの検討も行う.提示装置と触覚センサを統合することで硬軟感の遠隔提示システムの開発を目指す.また,開発した触覚センサを用いて提示装置をキャリブレーションするという方法も想定している.
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Research Products
(6 results)