2012 Fiscal Year Annual Research Report
情報を用いたフィードバック制御による熱機関と低温実現の理論的評価および実験
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12J08593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 創祐 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱力学 / 熱力学第二法則 / フィードバック制御 / 情報 / 熱力学第三法則 / ベイジアンネットワーク / 統計力学基礎論 / 冷却 |
Research Abstract |
フィードバック制御による生体分子などを含む一般の熱機関の作成のために本年度は、フィードバック制御中での粒子の揺らぎと情報量の関係に関する研究(1)と、フィードバック制御に限らない一般の複雑な情報交換や相互作用する系での情報量と熱力学第二法則の拡張である、部分系における熱力学の研究(IDを行った。 (1)については、フィードバック制御を受けるLangevin系を使って、粒子揺らぎから計算される温度と、情報量の関係を離散的なフィードバック制御の下で議論を行った。このようなフィードバック制御による冷却は、重力波検出装置や量子状態の実現に使われており、様々な応用が考えられる。この議論の中で、温度の下限を情報量の側から導出したり、熱力学第三法則を情報量の側から導出した。 (II)については、分子モーターなどの生体系や化学反応系や相互作用するコロイド粒子系などに適用可能な一般法則を導出した。この研究に関して次の3つを明らかにした。 ・複雑な情報交換や相互作用する系の間で、「情報」を用いた熱力学第二法則のような不等式や、今まで知られていた非平衡関係式の「情報」バージョンを一般に構築可能であること。 ・物理で現れるような複雑な相互作用は全て、ベイジアンネットワークと呼ばれるグラフ理論を用いることで数学的に表現が可能であり、ベイジアンネットワークの用語で熱力学を記述したときに自然と「情報」と熱力学が結びつき、視覚的にも理解できるということ。 ・ベイジアンネットワーク上で「情報」の熱力学を一般に構築可能であり、情報交換や情報の輸送と結びついた新しい法則を作れるということ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述(II)のベイジアンネットワークの研究により、限定的なフィードバック制御の議論を超えてより一般的な法則を導出できたことにより、どのような実験的なセットアップについても対応する情報量の関係式を構築する一般理論が完成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ベイジアンネットワークの理論をより完成度を高めてゆき、すべての物理系を網羅するような基礎理論を構成してゆく。そしてフィードバック制御だけに限らずに、自律的な生体システムなどや他の物理系において情報による制限がどのように表れてくるかの具体的に研究を行う。また冷却に関する議論も進めてゆき、我々がつくった理論を実用できるようにしてゆく。
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Research Products
(9 results)