2012 Fiscal Year Annual Research Report
運動によるミトコンドリア新生におけるエピジェネティクス制御
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12J08668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北岡 祐 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミトコンドリア / 運動 / クレアチンキナーゼ / PGC 1α |
Research Abstract |
C57BL/6マウスを実験動物として用い、骨格筋において一過性の運動によってミトコンドリア新生のマスター遺伝子として知られるPGC-1αをはじめとしたミトコンドリア関連遺伝子の発現がどのように変化するのかを検討する実験を行った。マウス(n=35)を以下の5群に分け(各n=7)、安静時、1時間のトレッドミル走行直後、1時間後、3時間後、24時間後にそれぞれ腓腹筋より筋サンプルを採取した。mRNA量をreal-time PCR法により測定を行い、またタンパク質量は、核、細胞質、ミトコンドリアにそれぞれ分画した後、Western Blotting法により測定した。PGC-1αのmRNA量は運動1時間後、および3時間後に有意に増加することが確認された。また、同様に核においてPGC-1αタンパク質量が運動1時間後、および3時間後に有意に増加した。一方で、細胞質のPGC-1αタンパク質量には変化はみられなかった。したがって、過性の運動によって、PGC-1αのmRNA量が高まると同時に、タンパクの核への移行が起こることが示された。 また、先天性の代謝性筋疾患として知られるマッカードル病(糖原病V型)の患者12名の筋バイオプシーサンプルに関して、ミトコンドリア関連遺伝子を含むエネルギー代謝に関わる因子のタンパク質量をWestern Blotting法により測定を行った。その結果、ミトコンドリア型クレアチンキナーゼのタンパク質量が、コントロール群と比べて有意に増加していることが確認された。このことは、筋グリコーゲンの分解を担うグリコーゲンホスホリラーゼの欠損したマッカードル病患者の骨格筋において、クレアチンリン酸シャトルが重要な役割を果たしている可能性、さらにその中でもミトコンドリア型クレアチンキナーゼの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスおよびヒトの筋サンプルを用い、生化学的な分析を順調に行っている。マッカードル病患者の筋におけるミトコンドリア型クレアチンキナーゼの重要性を明らかとし、この結果はMolecular Genetics and Metabolism誌に掲載された。マウスを用いた実験においても、一過性の運動によるミトコンドリア関連遺伝子のmRNAおよびタンパク質量の変化について網羅的に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスを用いた実験に関して、これまで得られたmRNAおよびタンパク質量の変化に関するデータを基に、今後はDNAのメチル化状態の変化に関する検討を行っていく予定である。しかしながら、筋サンプルよりミトコンドリアを単離する際に、これまで行われてきた単離方法では、小胞体マーカーであるPDIが混人してしまうことが確認されたため、ミトコンドリアの単離方法についてまず再検討をしていく必要がある。ヒトの筋サンプルに関しては、マッカードル病(糖原病V型)に加えて、ポンペ病(糖原病II型)患者についても分析を行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)