2012 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理および非平衡グリーン関数法を用いた熱電変換材料の熱伝導解析
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12J08724
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志賀 拓麿 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フォノン / 熱電変換 / 第一原理 / 合金 |
Research Abstract |
第一原理的に得られた原子間力定数を用いて,ボルツマン輸送方程式を解く非調和格子動力学法(第一原理熱伝導解析法)を,熱電変換の分野で有力な鉛テルライドと,その対極・代替材料であるマグネシウムシリサイドに適用し,実験結果を定性的かつ定量的に再現する結果を得た.また,両材料の熱輸送解析結果を用いて,累積熱伝導率を評価することで,近年注目されているナノ粒子焼結化による格子熱伝導率の低減効果を評価すると共に,熱電性能に与える影響を見積もった.その結果,両材料では比較的短い平均自由行程を有するフォノンが熱伝導に支配的であるため,ナノ粒子焼結化が熱電性能向上に与える影響は限定的であることが分かった.次に,第一原理的に計算したポテンシャルのもとで分子動力学シミュレーションを行い,実験的に幅広く用いられている合金化による格子熱伝導低減を評価した.その結果,実験でみられる急激な格子熱伝導率の低減を定性的かつ定量的に再現した.さらに,合金化による質量差フォノン散乱メカニズムの素過程を理解するために,分子動力学法に基づいたモード解析法を実行し,質量差フォノン散乱影響を定量的に評価した.また,既存のモデルと比較を行い,モデルの妥当性と有効範囲を検証した.当該年度で作成した格子熱伝導解析ツールを用いることで,合金化によって生じる複雑な散乱過程による格子熱伝導率低減効果を多角的に検証できることから,高いインパクトを持つ学術的研究に留まらず,科学的根拠に基づいて合金化の制御性を高めることができ,工学的にも重要な研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶熱電変換材料の格子熱伝導解析は順調に進んでおり,比較的高い精度で実験を再現する結果が得られるようになった.さらに,微視的なフォノン輸送情報を用いてナノ粒子焼結化による格子熱伝導率の低減効果を見積もることができる.また単結晶材料だけに留まらず,合金結晶の熱伝導解析を進めており,実験結果を再現する格子熱伝導解析結果が得られている.また,合金結晶中のフォノン散乱を分子動力学法に基づいて直接評価するツールを作成し,合金化効果の検証を行える段階に入っている.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は,合金化によって生じる散乱過程のうち質量差散乱に注目したが,力場散乱など他の散乱過程も同様に評価しなければならない.今後は,マグネシウムシリサイドを母材とした合金結晶を対象として,他の散乱過程も同様の手続きで解析していき,合金化効果の評価とモデル化を目指す.さらに,マグネシムシリサイドのみならず,より複雑構造を有する酸化物系熱電変換材料ヘアプローチしていく.一方,非平衡グリーン関数法では,近年,分子動力学法に基づいて,非弾性散乱の効果を含めた方法論が提案された.この方法論は,比較的簡単に実施することが可能であるため,当該年度で取り扱った材料に対して適用し,界面におけるフォノン散乱を検証する.
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Research Products
(15 results)