2012 Fiscal Year Annual Research Report
既存インフラストラクチャへの導入障壁を取り除く暗号技術
Project/Area Number |
12J08733
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
坂井 祐介 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 暗号技術 / 公開鍵暗号 / 証明可能安全性 |
Research Abstract |
本研究で目指す暗号技術は,通常の暗号技術で達成される高い安全性に加えて,既存インフラストラクチャへの導入障壁を取り除くことのできる有用な付加機能を持つ暗号技術である. 本年度は,そのための重要な要素技術となる,暗号化できる平文を制限できる公開鍵暗号方式の設計に目標を定め,同内容を含む論文を電子情報通信学会英文論文誌に投稿し,採択となった.本成果は,グループ署名と呼ばれる匿名認証技術の証明書失効機能(認証を実行できる人物から認証実行の権限を剥奪する機能)に着目し,証明書失効機能を実現する技法を公開鍵暗号に取り込むことで得られた成果である.この2つの要素技術間の関連性について厳密な証明を得るには至っていないが,次年度はこの関連性の厳密な証明に取り組む計画である. また,それに関連して,同じくグループ署名の署名者特定結果の正当性の証明(ある認証実行の履歴から,その認証を実行した人物を特定する機能)という機能に着目し,その知見を公開鍵暗号に取り込むことで,別種の機能付き公開鍵暗号が得られるという成果も得ている.通常の公開鍵暗号は,復号結果が正当な復号手続きによって得られたものであること確信するためには実際に復号してみる他なく,そのため,受信者以外は復号結果の正当性を確認することはできないものであった.ここで得られた機能付き公開鍵暗号は,復号鍵自体を漏洩させることなく,復号結果が正当であることを(復号鍵を持たない)第三者に確信させられる機能を持つものである.本成果については,2つの要素技術間の関連性について厳密な証明が得られており,ここで得られた知見を使って,上記の「証明書失効機能」と「暗号化できる平文を制限できる公開鍵暗号」の関連性の証明に取り組む計画である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本研究課題の基盤となる要素技術である「暗号化された平文を制限できる公開鍵暗号」について一定の成果を得られており、実際に同成果は査読付き英文論文誌に採録ともなっていることから、順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
暗号化される平文を制限できる公開鍵暗号についてこれまでに得られている成果は、グループ署名方式の証明書失効機能を基にしているが、両者の厳密な関係、特に、基とするグループ署名方式がどのような条件を満たすときに暗号化される平文を制限できる公開鍵暗号が構成できるかについては明らかになっていなかった。次年度は、この点の解明に取り組み、本研究を完成させる計画である。これにより、今後新たな数学的構造に基づくグループ署名方式が出現した場合にも、そのグループ署名方式から暗号化できる平文を制限できる公開鍵暗号方式が構成できるかどうかが直ちに明らかになるため、本研究の成果の一層の活用が進むと期待される。
|