Research Abstract |
平成24年度は,不正確なメタ理解の原因の特定のため,メタ理解過程に注目し,以下の2つの実験を実施した。研究実施計画において,理解評定における評定時間を用い判断ルートとメタ理解の正確の関係性について検討する予定であった。しかしながら,内省報告を用いた場合,参加者が用いていた手がかりの種類とメタ理解の正確さについてより詳細な検討を行うことが可能となるため,評定時間ではなく参加者の内省報告を指標とし検討を行った。実験の結果,読解能力の高い読者において,文章の処理に努力を投入していた読者ほど,理解手がかり(文章の説明可能性など)がメタ理解に有効になることが示された。この結果は,読解中の処理過程が,理解手がかりの有効性に影響することが示唆するものであり,読解中の処理過程がメタ理解過程のどのような過程に影響するのかを初めて示した研究である。そのため,本研究はメタ理解過程の解明に大きく寄与するものであると考えられる。次に,主観的難易度とメタ理解の関係性に焦点を当てた。Linderholm et al.(2012)において,読者の知覚する処理努力とメタ理解の正確さに関連があることが示されている。上記の研究を考慮すると,読解中の注意制御過程を直接測定しメタ理解の正確さとの関連性について検討を行う前に,読解中の注意制御過程を規定する要因についてまず検討を行っておく必要がある。そこで,主観的難易度が読解中の注意制御過程に影響し,メタ理解の正確さに影響するという関係性について検討した。実験の結果,主観的難易度が読解中の注意制御過程に影響し,メタ理解の正確さに影響することが示唆された。これまでの研究において,読者の知覚が,読解中の注意制御過程に及ぼす影響に関しては検討されてこなかった。本研究の知見は,読解中の注意制御過程を含むメタ理解過程についての示唆を与えるものであり,上記の研究と同様,メタ理解過程の解明に大きく寄与するのと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,不正確なメタ理解を導く原因を解明するため,メタ理解過程について検討を行った。実験の結果,読解中の注意制御過程が,手がかりの有効性に影響し,その結果メタ理解過程に影響する可能性が示された。 さらに,読解中の注意制御過程を規定する要因が存在することも明らかとなった。そのため,本年度の研究を通じて,より詳細なメタ理解過程を明らかにすることができたと考えられる。しかしながら,読解中の注意制御過程を規定する要因に関する検討が不十分であるため,研究の目的の達成度は,おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から,読解中の注意制御過程を規定する要因が示された。そのため,読解中の注意制御過程を直接測定し,読解中の注意制御過程とメタ理解の正確さとの関連性について検討を行う前に,読解中の注意制御過程を規定する要因を特定し,メタ理解過程のさらなる精緻化が必要となる。というのも,読解中の注意制御過程がメタ理解の正確さに重要であるのであれば,その要因を特定しなければ,適切な介入法を提唱できない可能性があるためである。読解中の注意制御過程を規定する要因として,主観的難易度の他にも学習への動機づけが考えられると次年度は多読解中の注意制御過程に影響を与える要因として,主観的難易度と動機づけに焦点を当て検討を行う。 具体的には,これらの変数が,読解中の注意制御過程を介し,メタ理解の正確に影響する可能性について検討する。
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