2012 Fiscal Year Annual Research Report
RT-PCRによる水中ウイルス検出に関わる阻害物質の同定及び阻害回避手法の確立
Project/Area Number |
12J08885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
端 昭彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腸管系ウイルス / RT-PCR / 検出阻害 / 有機物質 / 水環境 |
Research Abstract |
水からのウイルス検出は,ウイルス濃縮,核酸抽出に続く逆転写(RT-)PCRにより行われるが,試料中に夾雑物が含まれる場合,核酸抽出やRT-PCRの効率は著しく低下する.このような検出阻害は原水試料に由来する阻害物質がウイルス濃縮過程で共濃縮されることで生じると考えられる.共濃縮される阻害物質について,有機物の観点から特性を評価した事例は存在せず,このため検出阻害回避手法も確立していない.水のウイルス学的安全性評価のためには10-100Lの大容量水試料を検査することが求められるが,検出阻害が問題となるため,現状では検査水量の増大は必ずしも検査感度の向上をもたらさない.そこで,ウイルス濃縮過程での水試料中の有機物の動態解析と,ウイルス検出阻害評価を組み合わせることで,ウイルス濃縮により共濃縮される検出阻害物質の特性評価を試みた. 東京湾沿岸域及び石巻沿岸域で水試料を採取し,これらをウイルス濃縮操作に供した.原水試料及びウイルス濃縮操作を有機物分析に供したほか,ウイルス濃縮液を用いウイルス検出及び検出阻害評価を試みた.対象とした試料の9割程度で顕著なウイルス検出阻害が観測された.ウイルス濃縮液の254nm紫外線吸光度と検出阻害の強度には線形関係が見られた(R2=0.49-0.65).また,原水試料と比較し,ウイルス濃縮液では疎水性及び30kDa程度の高分子有機物が特に顕著となる傾向が見られた.これら有機物画分が特にウイルス検出阻害へ関与していると考えられた.これに対し,ウイルス粒子は親水性かつ2,000kDa以上であると考えられる.そこで,疎水性物質を吸着するDAX-8樹脂及び70kDa未満の粒子を排除可能なゲルろ過による濃縮液精製手法を検討した.DAX-8とゲルろ過を併用することで,東京湾及び石巻試料について,検出阻害の抑制効果及びウイルス定量値の向上が確認された.従って,当手法は水試料ウイルス濃縮液について,ウイルス検出阻害の克服に効果的であると判断できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的であるウイルス検出阻害抑制手法の確立は,概ね達成することができたため,上記の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は手法のさらなる最適化を試みる予定である.構築した阻害物質除去手法により,試料中のウイルスのロスが生じ得る.従って,ウイルスのロスを最小化する必要があると考えている.具体的には,ゲルろ過に際し,排除可能分子量の異なる複数のゲルろ過ユニットの比較検討を試みる.また,現時点では,手法は海水及び河川水試料についてのみ適用しているが,地下水や浄水についても有効性を検証する予定である.
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Research Products
(7 results)