2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08928
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
酒井 佑規 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | グラフェン / 六方晶窒化ホウ素 / 超格子 / 電子構造 / 密度汎関数理論 |
Research Abstract |
無限積層系であるグラフェン/窒化ホウ素超格子は、積層パターンに応じた興味深い電子的特性を持つことがこれまでの研究で明らかになっている。今年度は、より実験的に合成しやすいと考えられる有限層数のグラフェン/窒化ホウ素薄膜について密度汎関数理論に基づいた研究を行った。グラフェンと窒化ホウ素は格子定数に約1.8%程度の差があり、格子整合するか否かは自明でない。さらに、格子整合は薄膜の性質そのものに大きく影響するため、まず、このような薄膜におけるグラフェンと窒化ホウ素の格子整合について議論を行った。その結果グラフェン一枚、窒化ホウ素一枚だけからなる二層の薄膜においては格子整合しない場合がエネルギー的に安定であるが、4層やそれ以上の層数を持つ薄膜では格子整合した場合がエネルギー的に安定となることを示した。先に述べたとおり、グラフェン/窒化ホウ素の複合系では格子整合が系の性質に大きな影響を及ぼすため、格子整合の可能性を示したことは当該研究領域において重要と考えられる。 上記の結果をふまえ、格子整合した薄膜の電子構造についても研究を行った。無限積層系の超格子では積層パターンに依らずつねに金属的な性質を示すことが明らかになっているが、薄膜では層数、積層パターンによっては半導体となるものが存在することを明らかにした。また、外部電場によって半導体薄膜のバンドギャップが変動することを示した。さらに、これらの電子構造が全て窒化ホウ素を媒介したグラフェン間の相互作用によって説明できることを見いだした。絶縁体である窒化ホウ素を媒介した相互作用による薄膜の電子構造変化は非自明であり、興味深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限層数のグラフェン/窒化ホウ素薄膜についてはその電子構造や構造の安定性などについて概ね明らかにすることができた。また、グラフェン/窒化ホウ素複合系に対してGW法を用いた計算を開始しつつある。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
GW法を用いた研究を本格的に開始して、グラフェン/窒化ホウ素超格子と薄膜についてさらに高い精度での電子的特性の解明を目指す。また、近年MoS2やWS2などの多様な二次元物質が実験的に合成されているため、窒化ホウ素以外の物質とグラフェンとの組み合わせについても考慮する予定である。これらと並行して、グラフェン/窒化ホウ素薄膜に関する投稿論文を執筆し、その研究の成果をまとめて発表する予定である。
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Research Products
(7 results)