2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用が起こすスピン依存伝導現象の理論
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12J08946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 祥人 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピントロニクス / ラシュバ相互作用 / スピントルク / スピン波 / トロイダルモーメント |
Research Abstract |
電子スピンの輸送現象を扱うスピントロニクス研究において、電子の軌道自由度とスピン自由度を結びつける役割を担うスピン軌道相互作用をうまく利用することが大変重要な課題となつている。また、伝導電子が磁化に与えるスピントルクの研究は、磁場によらない新しい磁気デバイス実現の鍵となっており、スピン軌道相互作用下における大きなスピントルク効果を期待して、近年盛んに研究が行われている。 本年度は、金属表面において巨大な効果を発現することが知られているラシュバ型のスピン軌道相互作用に着目し、その下でのスピントルクの計算を解析的に実行した。するとこのスピントルクは、ラシュバ相互作用が空間反転対称性を、磁化が時間反転対称性を破っていることで生まれるトロイダルモーメントに大きく依存することが明らかになった。実際、このスピントルクによるスピン波の分散関係を古典的に求めたところ、トロイダルモーメントに対しスピン波の進行方向が平行か反平行かによってエネルギーが異なる。これまでスピン波の非対称な分散関係として、スピン波の進行方向にスピン偏極した電流を印加することで起こるスピン波のドップラー効果が知られていたが、本研究によりラシュバ効果を利用することにより電流をかけることなく類似の効果が得られることが判明した。 さらにこの結果に対し、伝導電子が磁化に与える効果を取り込んだ有効的なスピンラグランジアンを導出した。すると、ラシュバ相互作用と磁化がもたらすトロイダルモーメントは、ジャロシンスキー-守谷相互作用として寄与していることが明らかになった。ジャロシンスキー-守谷相互作用は、スキルミオンのようなトポロジカルな磁化構造実現の根幹となつており、今後ラシュバ系における磁化ダイナミクス研究は益々重要性が高まっていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結果を得るための解析計算の複雑さ、また計算過程で当初想定していたものとは異なる方向性が見られたため、別の角度からの解析についても行ったことにより、かなりの時間を有してしまった。しかしながら結果的に、スピン軌道相互作用下における電子スピンの運動に関してより深い理解が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
非磁性/磁性金属接合系に現れる、ラシュバ効果と磁化が生み出すトロイダルモーメントは、スピン波に非対称な分散関係を与える以外に新奇な現象を引き起こす可能性を秘めている。トロイダルモーメントによる物性現象を考えた先行研究を参考に、新たなスピントロニクス現象の理論的な予言を目指したい。 また、スピン軌道相互作用をSU(2)ゲージポテンシャルとして取り扱うことで、スピン軌道相互作用下における電磁場による電子スピンの輸送現象を、U(1)およびSU(2)の2種類のポテンシャルにより定義される場を用いて整理していきたい。不純物による電子の拡散運動にっいても考慮することで一般的な理論構築を図るが、膨大な計算を注意深く処理していかなければならない。
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Research Products
(6 results)