2012 Fiscal Year Annual Research Report
環状両親媒性ブロック共重合体による刺激応答型ナノ構造体の構築と新規機能の開拓
Project/Area Number |
12J09031
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 智 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013-03-31
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Keywords | 環状高分子 / 高分子ミセル / 温度応答性 / イオン応答性 / ヒドロゲル / 放出制御 / 電場応答性 |
Research Abstract |
本研究では、自然界において優れた生物学的機能を発現している生体(高)分子の持つ、ユニークな『かたち(トポロジー)』に着想を得、環状両親媒性ブロック共重合体の自己組織化に立脚したトポロジー効果の増幅、およびナノ構造体の新規機能創出を目指した。 先ず、環状両親媒性ブロック共重合体(Cyclic)の自己組織化により得られたミセルは対応する直鎖状両親媒性ブロック共重合体(Linear)によるミセルに比べ、飛躍的に高い耐塩・耐熱性を示すことが見出され、これらを相補的に制御することに成功した。本成果により、化学組成や分子量に手を加えることなく、トポロジーの異なる高分子の混合のみよってミセルの安定性を制御することが可能となり、例えば、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアの設計指針に新たな方法論を提示することに繋がると考えられる。 続いて、Cyclicによるヒドロゲルを構築したところ、Cyclicは対応するLinearに比べ低いゾルーゲル転移温度を示し、ヒドロゲル中に担持されたゲスト分子の放出を顕著に抑制することが明らかとなった。本成果により、ミセルというナノサイズの制約を超え、そのトポロジー効果をマクロスケールのヒドロゲルの特性にまで昇華することに成功した。 さらに、液晶性セグメントを有するCyclicの自己組織化により得られた棒状ミセル、及びベシクルの電場応答、及びゲスト分子包摂・送達機能を対応するLinearと比較・検討し、CyclicがLinearに比べ、より効果的にゲスト分子を包摂し、電場への鋭敏な応答を示すことが定性的に確認された。すなわち、トポロジーの差異がナノ構造体の電場に対する応答性をも変化させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、環状両親媒性ブロック共重合体による高分子ミセルを作製し、当初の目的である耐塩性向上とその制御、耐熱・耐塩性の相補的制御を達成したことに加え、ヒドロゲルの構築によるゲスト分子の放出制御、電場応答性ナノ構造体の構築およびそのゲスト分子送達機能についても明らかにした。これらのことから、当初の計画以上に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、両親媒性ブロック共重合体により構築されたミセルやベシクル、ヒドロゲルなどの分子集合体の刺激応答性が、直鎖状から環状への高分子トポロジー変換に伴って著しく変化することを突き止めた一方で、その詳細なメカニズムについ七はまだ明らかになっていない。これらの各種トポロジー効果の増幅メカニズムを解明することが出来れば、更なるブレークスルーとなるトポロジー効果の発見にもつながるため意義深い。そこで今後は、NMR緩和時間測定およびX線測定を通じて、直鎖状および環状両親媒性ブロック共重合体による分子集合体中での、分子鎖の運動性や秩序性に関する知見を得る必要がある。
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Research Products
(7 results)